次回の上映会は11月16日(土)。市岡康子さんを迎えて『クラ――西太平洋の遠洋航海者たち』と『女の島 トロブリアンド』の二本立てです

ツチノコ映画ようやく完成[今井友樹]

◆地平線通信539号(2024年3月13日発行)より転載[筆者:今井友樹]

没後10年姫田忠義回顧上映会。この企画を民映研のメンバーを巻き込んでやり切りました。「親父が死んで10年、親父も宮本先生が亡くなって10年くらいで、不思議と先生の話をしなくなった。今井くんも、これからは自分の時代だね!」。姫田さんのご子息の姫田蘭さんから言われました。僕が映像を生業にして20年が経とうとしています。これまでずっと民映研の意義を素直に信じ、民俗の映像記録の大切さをひたすら実践してきました。そのことを信じて疑わず。ただ、いま頃になって思うのです。なぜ大事なのか、どういう未来があるのか、型にはまり過ぎていやしないか、もっと柔軟でよいのではないのか……。先の回顧上映会は、頑なだった自分の心を揺さぶりました。

特に、来月から劇場公開も予定している民映研の代表作『越後奥三面―山に生かされた日々』(1984年/145分/デジタルリマスター版。4月27日からポレポレ東中野でロードショー予定)。いままで何度も見ている作品なのに、印象が全く違っていました。見ている自分の内面を刺激したのです。それは民映研で積み上げてきた映像制作のテクニックが、ガタガタと崩れるようでした。

もっと素直に、純粋に、下手に、無骨に、生身の人間として記録と表現に向き合うことが必要と感じたのです。そう思うようになった僕の心境の変化は、実はここ数年の間に起こっています。ツチノコの映画でも同様でした。先々月、ようやくツチノコの映画が完成しました。この映画は一度昨年夏に編集を終えていました。しかし、そこから幾度か内容をがらっと作り変え、現在の形に行き着いたのです。

どういう方向でまとめていくのがベストか、自分ではわからなくなっていたからです。そんな迷いに答えを出せたのは、スタッフや仲間からのアドバイスでした。これからの20年、記録するという姿勢は変わらないけど、僕はまったく違うプロセスで向き合っていこうと思っています。変化を積極的に受け入れて、新しい自分に生まれ変わろうと心に決めました。どんな世界が待っているのだろう。僕は、いまとてもワクワクしています。そんな僕の転換期に出来上がったツチノコの映画を、5月からの劇場公開に先駆けて3月20日に地平線キネマ倶楽部の試写会で上映します。ぜひ、ツチノコを見届けていただけたら幸いです![今井友樹]

この記事を書いた人

地平線キネマ倶楽部事務局。デジタルエディター。北部パキスタン文化研究者

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