次回の上映会は11月16日(土)。市岡康子さんを迎えて『クラ――西太平洋の遠洋航海者たち』と『女の島 トロブリアンド』の二本立てです

『ガザ 素顔日常』の自主上映会を実施しました

■地平線通信538号(2024年2月7日発行)より転載[筆者:丸山純]

昨年の11月末に、西荻窪のカフェで開催された『ガザ 素顔の日常』の自主上映会に参加した。元朝日新聞記者で退職後は中東専門のジャーナリストとして活躍している川上泰徳さんが主催された上映会で、2022年の劇場公開時に諸事情から見逃してしまった作品だったため、待ってましたとばかりに申し込んだ。

川上さんとは面識がなかったが、8年ほど前に『中東の現場を歩く』(合同出版)という著書を読み、雑誌の書評で取り上げたことがある。読み進むうちに、あれ、これは以前読んだぞ、と思わされるシーンが幾つもあり、過去に朝日新聞に載った川上さん執筆の記事が、自分の中東への理解や知識として欠かせないものになっていることに気づかされた。そもそもこの映画の存在も、劇場公開に向けてネットニュースに書かれた川上さんの紹介記事で知ったのだった。

エンドロールが流れたあと、呆然としてしまってしばらく立てなかった。映画のさまざまなシーンが頭のなかにフラッシュバックしてきて、考えがまとまらない。タイトル通りに、ガザならではの「日常」が淡々と描かれる。美しい。自然も文化もこんなにも豊かな土地だったとは、想像したこともなかった。とくに繰り返し登場する海のシーンに心揺さぶられた。

でも、いま見た光景のほとんどがすでに瓦礫の山と化していて、登場人物たちは住む家をなくし、難民生活を送っているはずだ。無事に生きていてくれるのだろうか。まるで憂さ晴らしのようにイスラエルとの境界フェンスに向かって石投げをしていた青年・少年たちの何人かは、ハマスの一員となって今回の襲撃に加わっていたのかもしれない……。

川上さんは配給元に毎回4万4000円(11月末までの特別価格)を支払い、一連の自主上映会を企画してきたという。ならば同じ手続きを踏めば、地平線会議でも上映会が実施できることになる。いま受け取ったばかりの衝撃と感動を、地平線のみんなと分かち合いたい。

そんな漠然とした気持ちに火がついたのが、12月初めに観た「姫田忠義回顧上映」だった。多忙で最終日に三面(みおもて)を扱った2作品を観ただけだったが、ああ、地平線でもこんなふうに映画を観る会をやりたいと素直に思った。会場で何人かの方に相談してみると、みなさん乗り気になってくれた。その後は高世泉さんに新宿歴史博物館の会場を押さえてもらったのち、自主上映会の開催を配給元に申し込み、1月14日の開催が決まった。

急だったので地平線通信で告知ができなかったが、当日は45名の参加者があり、一人当たり1000円の参加費(資料代)に加えてカンパもかなりいただいて、配給元に支払う費用(5万5000円+チラシ代1600円+送料)と会場費(使用料6000円+設備使用料1000円)もまかなうことができた。めまいの発作が出てしまって映画終了後の私のトークはよれよれだったが、宮本千晴さんをはじめ、地平線の中核メンバーが多く参加してくれて、とてもうれしかった。

今後は、「地平線キネマ倶楽部」としてこのような上映会を企画していきたいと思っている。その第一弾として、昨年6月の地平線報告会に登場してくれた今井友樹監督の『おらが村のツチノコ騒動記』の上映が決まった。3月20日の春分の日(水・祝)。会場は新宿歴史博物館。乞うご期待。詳しくは次号で。[丸山純]

この記事を書いた人

地平線キネマ倶楽部事務局。デジタルエディター。北部パキスタン文化研究者

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