★地平線通信540号(2024年4月17日発行)より転載[筆者:丸山純]
3月20日の春分の日、新宿歴史博物館で第2回目の「地平線キネマ倶楽部」上映会を実施した。上映したのは、今井友樹監督の『おらが村のツチノコ騒動記』(71分)。昨年6月の地平線報告会では、未完成だった作品のハイライトシーンを断片的に見せてもらっただけだったので、一本の映画としてぜひ観てみたいと地平線の仲間たちから期待が寄せられていた。今井君と配給元のご厚意で、5月18日から予定されている劇場公開(ポレポレ東中野ほか)に先駆けて、試写会として特別に先行上映させてもらうことができたのだ。参加者は41名。
驚いたのは……と書き始めて、ふと思う。ここで映画の内容や感動を私が書いてしまうと、劇場で観るつもりでいるみなさんにとってはネタバレになってしまうのではないか。ううう、言いたい。書きたい。分かち合いたい。でも、初めて観たときの感動はやっぱり大切だ。今井君のこれまでの作品とはちょっと異なるタッチになっている、とだけ匂わせておこう。へぇぇ、あの今井君が……いけない、いけない。ここまでにとどめておかなくちゃ。
上映後のトークで、今井君に制作者としてのさまざまな話を聞かせてもらった。撮影を担当した伊東尚輝さんにも登壇していただき、撮影上の苦労話や今井君の監督ぶりを聞くことができた。1時間半近くに及んだトークのおかげで作品の理解が深まり、立体的になった。これこそが地平線キネマ倶楽部の醍醐味だと、つくづくと感じた。
特筆しておきたいのが、今回はバリアフリー版を上映してくれたことだ。登場する人たちが語るすべての台詞に字幕が付き、効果音や音楽にも短い解説が付く。地平線報告会でみんなが感じた「方言がなかなか聞き取れないよ~」も見事に解決。伝統文化を記録する映像にとっては、大きな味方となるだろう(劇場公開版では専用のアプリをインストールして、スマホで字幕を見ることになるそうだ)。
親しい関係なので、トークで失礼な突っ込みをいっぱいしてしまったなと反省していたが、今井君から翌日「上映後もいつもと違う話の展開になって僕も色々な気づきや発見をもらいました。また、昨日お伝えしそびれたのですが、エンドロールには、協力者として『地平線会議』のクレジットも載っておりました」というメールをもらい、ホッとした。劇場で観るみなさん、ぜひエンドロールをしっかり確認してきてください。
次回の地平線キネマ倶楽部は6月1日の土曜日(地平線報告会の翌日)。笹谷遼平監督の『馬ありて』を上映する予定。詳しくは次号で。[丸山純]
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