■安東 浩正 ANDO Hiromasa 2
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03…1995年12月 西チベット ラカスタール湖にて

【完全静寂なる無人地帯】……そこには荒涼とした大地が広がっていた。極寒の荒野、無人の荒野、薄い空気、文明とは無縁の、神神によってのみ委ねられた世界。あるいは、ここには悪魔が住んでいて、ぼくをどこか遠い世界へと、帰る道のない世界へと連れ去ってゆくかもしれない。
冬のチベット高原は確かに寒いが、乾季であるために天気はよい。連日抜けるようなチベットブルーの深く蒼い空の下を走る。それは宇宙に近い蒼色であり、気分はコスモノートサイクリストである。しかし標高5000メートルを越える峠をいくつも越えなければならず、雪があり、未舗装道路の情況も最悪で、おまけに高山病で頭がくらくらした。
バックにナムナニ峰(海抜7694m)。
Kathmandu-Lhasa-Kunming Bike Expedition, 1995 Winter]

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04…1995年12月 西チベットのカイラス山からプランへの道にて

【テントでの朝】……朝はとにかく寒い。いつも暗いうちから起き出して氷を溶かしミルクティーを沸かす。朝食はチベット人の主食である麦の粉ツアンパだ。一番憂うつな瞬間は靴を履く時である。零下30度で凍った靴の中に三重の靴下を履いた足をむりやり詰め込む。ほどなく足先は凍りはじめる。すぐに準備を完了し走りはじめないと、そのまま本当に凍ってしまうだろう。背後にネパールとの国境のヒマーラヤの山々が連なっている。
Kashugar-Kailash-Kathmandu Bike Expedition, 1995 Winter]

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