■安東 浩正 ANDO Hiromasa 1
spicelogo
01…1995年3月/チベットと中国雲南省の境にて

【東チベット雲南ルート】……ラサ出発以来、もう1ヵ月近く顔を洗ってないので、ぼくの顔はチベット人よりも真っ黒だ。バックの梅里雪山峰(海抜6740メートル)はチベットと中国雲南省との省境にあり、雲南では最高峰。この山はチベット仏教徒にとって聖山であり、旅行者の間で幻のルートといわれる東チベット雲南ルートにおける最大の見所だ。この梅里雪山には12人の日本人登山家が眠っている。偶然見つけた遭難碑には日本語でこう刻まれていた。“大地あり、美しき峰ありて、気高き人がいて”。梅里雪山峰、いまだ未踏の山である。
[Kathmandu-Lhasa-Kunming Bike Expedition, 1995 Winter]

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02…1995年12月8日/西チベット聖山カイラスにて

【カイラス巡礼の道】……アジアでも最も聖なる地、西チベットのカイラス山は、仏教徒・ヒンズー教徒・ボン教徒にとって、幾千年のながきにわたって巡礼の最後の目的地であった。敬虔なるチベット人は、数千キロの道を数ヶ月もかけて、この山の巡礼にやってくる。それは交通機関が発達した現在でも同じ事だ。試練を乗り越えた旅人のみが巡礼を許される。そのカイラスには歩いて一周する巡礼路がある。その距離は54キロあり、早いものは1日で巡る。一周で一生の罪を拭い去り、108周で涅槃の境地に達するという。しかし厳冬期のこの時期は、チベット人の巡礼者もほとんどいない。ここはあまりに遠い遥かな世界であった。
Kashugar-Kailash-Kathmandu Bike Expedition, 1995 Winter]

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