2001年4月の地平線報告会レポート


●地平線通信258より

先月の報告会から(報告会レポート・258)
水の住処(すみか)を求めて
丸山富美
2001.4.27(金) アジア会館

最近、地平線報告会に若手の参加者がふえている。1月の石川直樹報告会の時に初めてやって来た、地平線会議のWebサイト(ホームページ)で知って来た、という人が多い。今回の報告は、そんな中の一人、報告者の丸山富美さんの若い友人に書いてもらった。


 地平線会議は本当に軽い気持ちで参加してみた。「富美さん(以下このように表記します)がせっかく誘ってくれたのだし、伊南村の地酒が飲めるのだからちょっと覗いてみよう」ぐらいの気持ちで。しかし参加してみて仰天。僕以外の参加者は、富美さんだけでなく皆ワールド・ワイドな「地平線を歩く人たち」であったことに後になって気づいた。なんだかすごい所に来てしまったと思ったけれども、ともかく報告しよう。

 この日の話は、二部構成になっていた。前半は富美さんのこれまでの生い立ちを辿ったスライド上映、後半は富美さんが現在住んでいる、福島県・伊南村で昨年「地平線報告会」が開催された時のビデオを上映しながら、現在を語るというものだった。

 富美さんは、1969年10月23日徳島県徳島市に生まれる。「23」にちなんで「富美(ふみ)」と命名されるが、出生時の体重は2340gと、今の富美さんを想像すると意外にも少ない数字だ。

 富美さんと「水」は今後密接な関係になってくるのだけど、幼児期は「潮の香りが好きになれなかった」という理由で海にはあまり行かなかったらしい。その海嫌いの少女がいずれ世界地図の上を縦横無尽に歩きまわる「地平線の人」になるのだが、それはもう少し先の話。

 そんな富美さんも大学生になり上京する。ところが水がまずくてどうしても飲めなかった、煮沸してもダメ。それだけはどうしても馴染めなかったそうだ。

 卒業後ワーキングホリデービザを取得し、渡豪する。1年間という期間限定ではあったが、海外の土地の人と生活を共にするのは初めてのことで、手さぐりで言葉や文化を体に染み込ませてゆく。その後タイへ行き、その中で異文化への興味・関心を急速に高め熟成させて帰国。その後これからの人生を模索し西表島で生活するも、「組織の中で自分を試してみたい、さまざまな出会いを通じて自分の価値観を高めたい」という思いから単身上京。ビルのジャングルの中に生活の場を移す。

 上京後は「自然」と「異文化」をテーマに掲げて現場での環境教育を実践するエコクラブというNPOでしばらく腰をおちつけることになる。その団体を通じて、電気もガスも水道もない南太平洋のヤップ島でコミュニティーの中に入れてもらい、そこで参加者として、またスタッフとしても生活を共にすることになる。「豊かさって何だろう」という命題を掲げたそのプログラムを経験したことは、価値観を今一度問い直すだけのことはあったようだ。

 その時のことを富美さんはこう語った。「沢の水にしろ、川の水にしろ、身近にある美味しい水と共に暮らせることは本当に豊かなことだと思います」。

 美味しい水を求める富美さんは、本当に豊かなのだと思う。滝が大好きな富美さん。おいしい水を飲むと「うまーい!!」と言って本当に嬉しそうな顔をする富美さん。いずれの富美さんもみんな輝いている。僕もそれを用いて豊かさについて考えてみたりしたけど、なんとなく分かったつもりでもはっきりとは分からない。それをはっきりと言える富美さんは、やっぱり味わい深い人だ。豊穣なんだ。いままでの人生のいい事も悪い事もしっかりとかみしめて、自分の栄養にしている。なんか、いいな。

 さて、話は再び富美さんへ。しばらくその後、東京で暮らしていたが、そこでの生活に悶々としていた頃、伊南村の人から「そんなに自然のことで悩んでいるなら伊南村へ来い」という誘い(?)を受け、何かがうまれてきて2ヵ月後、村の人になる。そして昨年の9月23〜24日にかけて、地平線報告会が同村の「大桃の舞台」という文化財で開催された。

 参加者は村内外あわせて300名ほど。あいにく雨だったが、その活気はビデオを通しても伝わってきた。しかも後半はみなさんほとんどへべれけ状態で座がかなり乱れていた感じがしたけれど、なんだかすごく楽しそうだった。地酒や地元の山菜・野菜を使った料理がふるまわれていた。富美さんの言う「豊かさ」は伊南村にもしっかり根づいているのだろうな。みんないい表情してたし。

「どう生きていいかわからなくなっちゃたもんね、もういいや」という人。ぜひ伊南村へ行ってみて下さい。ぜひ富美さんに会ってみて下さい。あなたの中にある「豊かさ」の種が少しは発芽することでしょう。[岡田涼平・東洋大四年]


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