1997年8月の地平線通信


■8月の地平線通信・213号のフロント(1ページ目にある巻頭記事)

地平線通信213表紙●7月11日〜16日の大崎O美術館での写真展「地平線発」に参加しました。ホントは準備の時から、片付けも参加したかったけど。重度の障害児を育てている母としては、この4月から区の助成金がナシになって、放課後の保育料が何と一月15万円(15万円も払えないので子どもをあずける日を間引きすることにした)。でも最終日以外は毎日通って会場にいたのです。そして、受付の机の内側にいて、地平線会議の本売りオバサンをしていたのでした。これが、楽しい。

●写真をぐるりと見終わった人がアンケート用紙を持ってきてくれる。そして、本を見たりしてくれて、ちょっと会話をする。そうすると、写真を見てくれた人が、どんな風に感じたかって、直線でピッ、と伝わってくる。――写真展をするって、こういうことだったのか――ハッキリ言って快感だね。

●本売りオバサンをしたり、友達が来てくれたら一緒に見てまわったり、喫茶店に行って珈琲を飲んだりしていたのだけど、ハタと思って、自分の写真を見知らぬ人がどんな風に見るのか、見てみようと思ったのでした。

●私の写真は3点なのだけど、ブルーの海と空。写真の前にはちょうどベンチがあって、ラッキー。そこに座ってしばらく様子を見たのです。一人で見ている人は、一人言など言わずに、通り過ぎていく(つまらないなあ、心の中で思った感想を声に出してつぶやいてくれればいいのに)。二人連れの人も黙って通り過ぎてゆく(何か言わないかなあ)。

●と、そこへ。最後まで一通り見たらしいお兄さんが戻って来た。おっ、好みのタイプのお兄さん。その人が、私の写真の前で止まった。ええっ! ジーっとみている。そして私の座っているベンチの端に座ってしまった。またまた、私の写真をジーっと見ている。そ、そんな! それからアンケート用紙を取り出して、書き込み始めた。顔をあげて私の写真のプレートをジーっと見ている。ドキドキ。私の写真の番号を好きな写真を書く欄に書き込んでくれているのだろうか!?●もう、ダメ。恥ずかしくて。「あの、あなたが見ているその写真、私なんですけど…」なんて、言えない。その場から逃げて、受付に戻った。

●でも、アンケート用紙は裏を上にして提出されるので、本人の前で見ちゃうなんてできない。「私が河田真智子です」なんて、まさか、言えない。その人は、アンケート用紙を提出し、本を2冊買ってくれて去って行った。

●ジャーン。江本さんと一緒にアンケート用紙をひっくり返した。好きな写真の欄には、「河田真智子さんのマーシャルの写真がとてもいい」と一行だけ。江本さんが、「27歳、カメラマン。真智子さん、今、流行りの16歳年下、いいじゃない!」と。えーっ。私、女の方から話しかけるなんてできないよ。その人のアンケート用紙の他の欄には「特に、島が好き」とも書いてあった。

●私が頑張ってカメラマンになり、島の写真展をやれば、名前もわからないその人は、島の写真を見に来てくれるだろうか。再会できるだろうか。何か、遥か先になってしまいそうで、不安。

●「とてもいい」とか「島が好き」って、まっすぐに素直に語れる人って、今どき少ないよね。ステキだよね。「あの、9月22日には私が書いた『島旅の楽しみ方』(山海道)という本が出ます。もしも旅に行かなかったら、本屋さんに行ってみていただけませんか。もしも出会えたら、また感想を聞かせてください」

●ドキドキの、写真展だったのでした。[河田真智子]



特集 写真展「地平線発」―21世紀の旅人たちへ―

7月11日〜16日 O美術館/7月17日〜23日 J.CITYホール


●写真展「地平線発」走りはじめました。大崎のO美術館で仕事の合間をぬって6日間見ていたのですが、来てくれた人たちの熱のこもったまなざしに感動しました。どの人もかなりの時間をかけてじっと見入っている。見おわったあとも、アンケート用紙に実にこまごまと感想を書いてくれました。そもそもの企画から写真の選択、会場選び、展示、運営、カタログの制作まで手がけてきた「ノヴリカ」のお二人、影山、本吉さんは、感無量であったでしょう、ご苦労さまでした。

●地平線会議のメンバーも協力してくれました。とくに、連日交代で会場につめてくれた河田真智子さん、木村満里子さん、展示に協力して下さった近山雅人さん、それにいつもの長野、中畑、武田さんをはじめとする皆さん、助かりました。 大阪にいるリヤカーの永瀬さん、初日にお祝いのファックスありがとう(この通信に転載させてもらいますよ)。

●おかげで、私たちが写真展のもうひとつの目的としている「年報・地平線から」「DAS」「地平線の旅人たち」など地平線会議が作ってきた本もいくらか売れました。スペースの都合で展示点数は半分に減りましたが、練馬の光が丘に会場を移してからも、多くの人々が熱心に足をはこんでくれました。

●さて、写真展の真骨頂は、これからです。会場に来てくれた方のなかに遠くから来た人もいて、そういう人と連絡をとりながら今地方での開催をめざして、あちこち打診しています。すでに動いている人もおり、いくつかは実るのではないか、と期待しています。

●お金がかかる(ノヴリカでは、関東では50万円、それ以外では70万円を運搬・梱包費を含む開催経費として見積もっています)ことなので、本来売り込みは美術展のプロである「ノヴリカ」にまかせるべきだ、との指摘もありますが、内容を見ればわかるように、これは地平線会議の19年の蓄積の中から生まれた写真展です。できるだけ地平線らしく、多くの知恵を集めて、日本のあちこちでこの写真展が開けるようにしたい、と素朴に考えるわけです。小生自身は、いろいろな知り合いに声をかけて率直にアピールしています。

●一応順調にスタートはしたけれど、どう展開してゆくか、すべてはこれからです。いろいろ相談しながら進めますが、皆さんも知恵をお寄せ下さい。

●なお、今回完成したカタログ(229点の全写真がカラーで掲載されています。凸版印刷の協力を得て作成されました)も非常に好評です。地平線会議の皆さんには500円(送料別)でおわけすることにします。[江本嘉伸]


写真展に来てくれた方に聞きました…

●恵谷治さん…写真のほかに各国語訳のコーランも出展してくれました…

◆正直いって、大して期待をしていなかった私は、会場に入って目を見開いた。「ウム、これは堂々たる写真展ではないか。これほどの展覧会を実現させたノヴリカの若夫婦は、なかなかやるもんじゃ」

◆その数週前に三輪さんから、開催までいろいろ難航したという話を聞いていただけに、多数のパネル展示には驚いた。「世界中に行っていらっしゃる皆さんの写真を集めるだけで、面白いと思うんです」

◆写真展の動機を熱心に語るノヴリカの本吉さんの話を聞きながらも、当初、私は勝手に手作りの展示を想像していたのである。

◆会場で写真集を手渡され、その制作を知らなかった私は、更に驚いた。その小さな写真集は本吉さんが情熱的に語っていた地平線会議への想いがあり、ページの端々から地平線会議そのものが溢れ出していた。 500円という廉価の写真集が可能になったのは、多くの人の協力があったに違いないが、地平線会議が新たな地平を切り拓いたような感動があった。

◆本吉さん、影山さん、本当にご苦労さん!

 

●丸山富美さん…このあとミクロネシアへ行ってしまった…

◆『ドックン、ドックン…』

◆O美術館の入口で胸の鼓動が高まっていた。今までの写真展へ入る時とは何だか違う気持ちだった。これから未知なる世界へと旅に出るような、そんな感覚が込み上がっていた。

◆中にはいると会場はそれぞれの作品から溢れる熱気で満たされ、不思議な(異様な?)空気が流れている。自分は行ったこともない土地のその場のエネルギーが写真を通して伝わってくる…。この瞬間この場所でシャッターを押したこの人は一体どんな想いでこの写真を撮ったのだろうか? どんな格好していたんだろう? 這いつくばって撮ったのか? たまたまシャッター押してしまったのか? 暑かったのか? 寒かったのか? お腹は空いてなかったのか? 気分は上々だったのか?

◆写真の向こう側から時間も空間も越えた旅人の気持ちがビシバシと伝わってきて、全ての作品を見終えたら身体が熱くなっていた。こんな写真展、世界中どこを探してもどこにもないような気がする。やっぱり“行くっきゃない”ですね!

 

●岸本実千代さん…写真展を見るために夫婦で広島から上京…

◆今回の写真展は、夫婦ともすごく楽しみにしてきました。特に主人の場合は、出展者の方々と作品がどれくらいすごいかということを知っており、しかも実際きてみると期待以上の作品の数々に「こんないいもの見れて超ラッキー!」とニコニコ顔でした。

◆私の場合、出展者の方々をほとんど知らないし、写真のことも良く分からないのですが、一つ一つの作品が窓のようになっていろんな国のいろんな景色を覗いているような、子供たちの写真には手を振りたくなったり、動物の写真の前では、逃げてしまわないように息を殺したりするような感覚で楽しませていただきました。

◆500円でちょっとした世界一周旅行を体験させていただいたような得した気分になりました。

 

●近山雅人さん…マダガスカルの写真を出展…

◆アンデバンダンの写真展は、難しいと言われている。寄せ集めの写真のためテーマの一貫性が保てず、その写真展の意図が観客に明確に伝わらないためである。その点では、今回の写真展は、まずまずと言っても良いだろう。旅という視点で貫かれているからだ。

◆まぁ、よくもあんなところまで・・・

◆ただ、旅先での人との関わりが見える写真が少なく感じられたのは、残念である。改めてカタログをめくってみると、人の写真が少ないわけではない。極地や山岳など、圧倒的な自然の写真の前に、人間の写真が圧倒されてしまったのかも知れない。民族衣装や道具などの展示も加えて、もっと人間くささを出しても良かったのだろう。

◆O美術館の会場は、ちょっと暗かった。特に最終ブロックに展示された写真は、照明の不足や、アンケート記入用の机などで、ゆっくりと見れる雰囲気に欠けてしまったのが残念であった。

◆練馬のJ.Cityの会場は、O美術館の半分の規模と言うが、それなりにまとまっていたと思う。

◆次回の横浜ではパン屋さんの売場が第1会場だと聞いている。この「旅する写真展」、この先どんな会場で、どんな観客を迎えるか、楽しみである。

 

●永瀬忠志さん…開催初日にファックスで送ってくれたメッセージ…

◆写真展「地平線発」―21世紀の旅人たちへ―の開催、おめでとうございます。見に来られた人たちは、その人なりの旅に出たくなることでしょうご開催までのご努力、ご苦労をお察しし、ご成功を心からお祈り申し上げます。 1997年7月11日

◆追伸 ノヴリカの本吉さんから、写真展のリーフレットとチケット、そして今日は、とても立派なカタログをお送りいただきました。ありがとうございました。

 

次回写真展:9月1日〜15日

10:00〜18:00第1会場:YOKOHAMA本牧館
第2会場:トヨタカレリア


O美術館で来場者に書いていただいたアンケートから…

◆写真展を見たというより、ぶ厚い写真集をみたという感じがした。“地平線”という引き出しが、こんなに多いのかと驚いた。K.I.(34)<男>花屋

◆一般募集をして、他の旅人にもチャンスを与えて欲しいです。A.H.(25)<男>調理師

◆人間に限ってるとか、自然だけの写真ではなく、何でもあるのがよかった。E.I.(23)<女>学生

◆結局もう1度この人たちの報告会をやってくれという話になってしまうのだが…、もっと詳しく知りたくなりますね。M.K.(36)<男>会社員

◆今「何かやりたい」と刺激を求めている私に、ちょうどよい刺激を与えてくれた写真展でした。R.H.(18)<女>学生

◆その場所(文化)と文明(カメラ)その他のせめぎあい。Y.I.(48)イラストレーター

◆少々気取った写真展で一寸がっかり。もっとザックバランに写真と対話したい。Y.K.(55)<女>主婦

◆もし話ができるなら、写真を撮られた方たちとお会いしたかった。もっと気軽に見て話せたらいいのに。M.K.(21)<女>学生

◆旅に行きたくなるような衝動にかられる写真ばかりでした。世界は様々なんだなあと感じる一方で、それらのすべてに大きく共通した何かが感じられるような気がしました。M.W.(16)<女>高校生

◆すべての写真にとてもひかれました。M.S.(17)<女>高校生

◆今まで自分が思いうかべたことのない国、場所でも、こんなに惹かれるところがあったのかと発見した気分です。M.O.(25)<女>会社員

◆「歩いてしかみられない景色というのは大事なことだ」という三輪主彦さんの言葉が心に残った。K.O.(22)<男>学生

◆少数民族の生活はきびしいけど、人間の原点のような気がします。写真を(武器として)撮りながら旅行できる人がうらやましい。J.H.(50)<女>

◆インターネットで個人情報が気楽に見ることができて面白かった。E.N.(25)会社員

◆コーランに日本語版があることを初めて知りました。M.S.(29)<女>会社員

◆記念写真的なもの以外はすべて面白い。とくに、K2、カンチェンジュンガ、動物など。T.A.(61)<男>自営

◆「こうしてはいれれない」という、心を落ち着かなくさせる何かがありました。M.T.(47)<女>主婦

◆いろんな自由な生き方をしている人がいるのだと感動。M.M.(?)<女>編集

◆一般にプロと呼ばれていない人の写真からはプロとはまた違った“何か”が伝わってくるような気がします。M.K.(30)<男>

◆飾らない写真の風景は、自分も同じ場所に出かけた様な感覚を与えてくれた。J.T.(31)<男>会社員

◆文化的に意味があると思うので、たくさんの人に見てもらえると良い。A.F.(36)主婦

◆風景の見方にも人それぞれの視点があっておもしろいなあと。A.I.(22)<女>学生

◆私は仕事でアフリカに出掛けていましたが、家族などからは日本を離れることに何度となく反対され、その度にくじけそうになるのですが、近くにこんな旅をしている人達がいて勇気づけられます。T.M.(26)<女>看護婦

◆皆さんが命を大切にしながら、これからも世界中を駆けめぐられることを期待します。M.K.(45)<男>公務員

◆展示物がどれもへっー、とおどろかせる。化石すごい。T.Y.(16)<女>高校生

◆私がカメラを持ったとき、何を撮ろうとしていただろうか、何を見ていただろうか。家に帰ったら、自分で撮った写真を見てみよう…と思った。K.H.(25)<女>学生

◆作品としての写真ではなく、まず行動(冒険)があって、その行動家の見たものを写真として残し、展示会として一般の人に見てもらうといった内容であるなら、壁面に写真をかけ、キャプションをつけるといった形式は極力とらない方がいいように思いました。会場には現地の小物や各国のコーランが置いてあったように、そうした方向性でもっとダイレクトなアプローチもあり得るように思うのですが。K.M.(35)<男>イラストレーター

◆カメラマンでも写真家でもない人達が、世界の旅の中で出会った人、風景、その他の感動で、みな“写真家”になってしまうんだよなー。M.K.(39)<男>会社員

◆自然の中で暮らしている子供(大人も含め)、目がきれい。あの状態なら50才で死んでもいいと思うような表情をしている。Y.S.(49)<男>会社員

◆日本の社会の閉そく感も、こうして世界をみる事によってもう一度原点を見直そうという気持ちになりました。M.H.(37)<女>

◆今のようにすさんだ中学生の気持ちを解放するには、このような自然、生きる人間、旅する人の息吹を感じさせるのがよいのでは。A.S.(35)<男>TVディレクター

◆ポストカードにして欲しい。M.T.(40)<女>主婦

◆山が多かった。A.Y.(6)<女>

◆生(?)っぽい写真が気にいっちゃいました。プロの人じゃない、写真への素直な気持ちとかも好きです。H.I.(24)<女>ボランティア

◆足がムズムズします。M.O.(33)<女>

◆少々観光的に写って居る写真が多い。M.M.(71)<男>

◆旅人はいくらでもいる。あっちこっちいって写真を写して展示して、それは何につながるのだろう。行ってきただけではない。地平線会議のこれからを知りたい。毎月集まってどうなるのですか?R.H.(43)<女>

◆有名人ばかりでおどろいた。H.Y.(25)<男>通信社記者

◆うらやましい限り。―此の方々の実行力を。Y.K.(67)<男>

◆今まで見た写真展の中で、一番満足、充実した気分です。

◆地平線会議でスライドを講演者が見せてくれるたび、ぜひ写真展で見たいと思っていたので感激しました。E.S.(27)<女>会社員

◆地平線会議というのはどういったグループなのだろうか。うちわなのか、興味がある人が集うグループか。それとも日本の冒険者のグループとまでいうのだろうか?C.N.(25)<男>学生

◆20代の人はなぜいないのでしょうか?みなさん年配の方々だと思います。こういった写真が好きな若者も多くいると思います。R.S.(24)<男>フォトグラファー

◆少しショックを受けました。このような活動を同じ地球上でされている方々がいらっしゃったとは…。素晴らしエネルギーをありがとうございました。S.I.(49)<男>ビデオショップ経営

◆冒険をする方々のパワーの源が何なのか、やはり理解を超えるものがありますが、(中略)私も私なりの旅を続けていけたらと思いました。K.M.(36)<女>会社員

◆生きるとはどういうことかを考えさせられました。N.K.(32)<女>

◆いろんな人に見てもらいたいな。できることなら、子供にもいっぱい見てもらえたらいいな。R.W.(29)<女>市場勤務

◆みなさん一人で写真展を開けるような方達ばかりで、それが集まるとすごい迫力、。地球交響楽という感じでした。

◆クーラーのきいた都会の美術館で見ていることが不思議な気分です。M.T.(40)<女>自由業

◆生きる力のあふれている写真、ほこりやにおいの感じる写真にひかれました。A.T.(27)<女>アルバイト

◆これからの人生について改めて考えたくなるような、すばらしい作品ばかりでした。M.S.(20)<男>学生

◆今日は、旅をされた方々が、その土地をどう感じ、シャッターをおしているのかを見たくて来ました。感じるものが多くありました。どうもありがとうございました。 M.H.(26)<女>助産婦

◆◆[まとめ:長野亮之介]


地平線ポストから

地平線ポスト宛先:〒173 東京都板橋区大山町33-6 三輪主彦方

〜電子メールでも受け付けています〜TAB00165@niftyserve.or.jp 武田力方

●野々山富雄さんから…97.6.20…屋久島発

◆3月より建て始めたマイホームがやっと棟上げにこぎつけました。ながかったー。車道から5分の山道に材をかつぎ上げ、電気もない所でほとんど一人で基礎工事からやるのはやっぱり手間がかかりました。移り住むには壁をはるなど、もう少し作業が必要ですが、どうにか梅雨が本格的になる前にはいけそうです。家といっても2間3間(6坪、12畳)のまだトイレも台所もない小さな小屋。でもそこをベースにどんどん増築していくつもりです。なにしろ土地だけはしこたまあるのだ(山林だけど)。仕事の方も屋久島ガイド協会に入れてもらえたので、わりといい金になるし、勉強になります(そなかわりハードですが)。

◆さて、ちょっと気持ちにも余裕がでてきたので、また首を突っ込みたくなってきました。ひとつ屋久島で地平線写真展をやってもらえないでしょうか。もちろんすぐにはムリでしょうけど、会場や人間の心当たりはあります。とは言え、どんな準備が必要か、経費はどれくらいかかるのか、あまりノウハウを持っていないので心もとない限りですが、それになんせ遠き屋久島のこと、来ていただくにも交通費などがかなり大変です。

◆でもたとえ写真展や報告会がむずかしくても、いつか屋久島へおいで下さい。宿泊については心配御無用。サケも浴びるほど御用意いたします。山、海、森、川のすばらしい屋久島。あっさりおれが永住を決めたこの島。いいですよ。

◆それでは皆様と再会できる日を楽しみにしております。


●金井重さんから…97.6.29…アラスカ発

◆アラスカの大地はゆうゆたるもの。マッキンリイの全ようを仰ぎたくて、20日もキャンプした青年や熊を写真にとりたくて今年また4ヶ月の予定で島を歩いている青年にもバッタリあいました。ふらりきた観光客の私はデナリのシャトルバスで熊(背中は金パツ腹と足は茶色のツートンカラー、ここの熊はベジタリアン)をながめ、幸いにも頭だけ木の中、南座も北座も顔を出したマッキンリイに感激してグレーシャベイのジュノーに移動してきたところです。夜につく途中バスの中から3匹のくじら(尾ひれ)が見えて大喜び。迷い込んだのでしょうね。町の人も大勢外に出ていました。町ではときどきはっとするほど日本人(祖先に)そっくりの人に出会って、モンゴリアンの血がさわぎます。では又。


●山浦正昭さんから…やまさんの野楽人便り(気まぐれ発行物 平成9年7月版)より…

〜〜〜やまさん・けいこのふうふテクテクヨーロッパ縦断ウォーク(その5)〜〜〜
ライン川のコブレンツからモーゼル川へ〈ドイツ4回目の旅〉7月20日出発・8月25日帰国予定

◆デンマークの先端をスタートした私たちのヨーロッパ縦断スケッチウォークの旅も、今夏で5回目となりました。今回は昨年ゴールしたライン川のコブレンツをスタートして、カールスルーエまでの400キロおよそ3週間のウォークです。前半はモーゼル川の川沿いですので、変化のある眺めの良いコースですが、後半はほとんど見たことのも聞いたこともないエリアに入ります。多少高原地帯ですのでアップダウンはありそうですが、果たしてどうなりますか。

◆あと、ドイツを1回、スイスを2回、フランスを2回で地中海のニースへ到着の予定です。フランスはドイツにくらべると徒歩旅行事情が変わり、私も未経験の国ですので、ちょっぴり心配です。まあ、当たってみるしかありません。足を動かせば前には進むのですから…。《展示は10月3日から30日まで》

◆今回も、ドイツで描いたスケッチとその歩行ルートを絵図にしたものを築地の朝日新聞で展示を行うことが決まりました。展示の方も今回で5回目です。ほぼ1ヶ月近くという、今までで最も長い期間です。展示の方はいつでもごらんになれますが、10月12日(日)は新聞社がお休みとなりますので、ごらんになれませんのでご注意下さい。

◆展示の最終日に有楽町駅前のマリオンで、世界で初めてのウォーキング・フェスティバルが開かれます。…私も10時45分頃から15分の予定でスライドを上映しながら、…ヨーロッパのスケッチの旅を報告することになっています。…いろんな話が聞けると思います。


●香川澄雄さん日本300名山・完走登山

◆昨年、重広さんが日本100名山を登って、話題になりましたが、香川さんは100名山はすでに終え、300名山に挑戦中でした。今年に入ってから、頂上ハンティングはスピードを速め、ついに残り18山に迫りました。これらの山を歩いて登ったのではなく、走って登ったのですから驚き。歩いたって山登りは大変なのに、それを走るというのですから体にいいわけはありません。その結果、心筋梗塞で慶応病院に運ばれ、生死の境をさまよったのち、シャバに復帰したのですが、その後は心臓が強化されたらしく、山を走るスピードは増してきました。山を走ると危険だという人がいますが、300の山をかけ登っても捻挫もしないのですから、香川さんにとっては安全登山なのです。ちなみに彼は「日本ウルトラランニング登山クラブ」の会長で、毎年三輪が自慢している奥多摩山岳耐久レースでも三輪より遥かに早くかけ登っている方です。

◆300番目の登山は8月31日(日)を予定しています。櫛形山がゴールですが、その日はみんなにあわせてゆっくり登るそうですから、記念すべきゴールを祝いませんか。ご一緒してくださる方は、三輪か香川まで連絡(ハガキで)下さい。[三輪主彦]連絡先:香川澄雄 〒198 東京都青梅市河辺町7-18-6/三輪主彦 〒173 東京都板橋区大山町33-6

●海宝道義さんからの連絡を三輪が要約しました…
◆阪本真理子さんが4月22日に「オーストラリア横断走り旅」に出発しましたが、7月7日、無事にシドニーのオペラハウス前に到着しました。西のパースからシドニーまで4200キロ。途中雨や風に悩まされましたが、足にマメも作らず一日平均55キロを77日間で走り抜きました。ウルトラマラソン仲間の車で伴走を受け、テント泊や車に泊まりながらの走り旅でした。日本の仲間たちには数日おきに現地の支援者からFAXが入り、刻々と状況が知らされていました。世界の果てとつながって、一緒に走っている思いでした。本人の走り終えてのコメント。「広い大陸の景色が微妙に変化して、楽しくて楽しくて」疲れたとかもうゴメンダという言葉は全く聞かれなかったようです。ここ数年正月に東海道五十三次を一緒に走っている仲間として、拍手喝采! 仕事も辞めて、いよいよ本格的に世界一周走り旅に向かうそうです。スゴイ、エライ。

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地平線はみだし情報
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今月末に300名山完走登山をめざす香川澄雄さんは、完走記念Tシャツを制作中。長野亮之介さんのイラストで中畑朋子さんが制作。地平線Tシャツと同じスタッフが制作にあたります。売り上げは松原尚之さんの登山費用にカンパするとのこと。

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地平線はみだし情報
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9月11日放送予定のNHK BSスペシャル「アジア釣り大紀行・皇帝魚に挑む」に今月の報告者、森田靖郎さんが出演!!



先月の報告会から
「山伏ワールドの冒険」
渡辺まちこ
1997.07.25(金)/アジア会館

◆今回のテーマになった山伏とは、いったい何ぞやと思い、報告会から帰って広辞苑を引いてみた。

◆山伏。〈1〉山野に野宿すること。世を逃れて山中に住むこと。〈2〉仏道修行のために山野に起臥する僧。野武士。〈3〉修験者の別称。とある。

◆しからば修験者とは何をする人物かと思い引くと、修験道の修行者。多く被髪で兜巾(ときん)戴き、篠懸(すずかけ)及び結袈裟(ゆいげさ)を着け、笈を背負い金剛杖をつき、法螺(ほら)をならし、山野をめぐり歩いて修行する。とあった。

◆そうか、あのコスチュームは、兜巾、篠懸、結袈裟、笈、金剛杖、法螺というのかと思い、今度は兜巾がよく分からずに引いてみたら、山中遍歴のときの瘴気(しょうき)防止で、黒色布製で十二因縁形の小型帽子(以上要約)とのことである。

◆何だ、また分からぬことばがでてきたかと、瘴気、十二因縁と引いているうちに1時間が過ぎた。なにやら新しい語学を始めたような気分である。

◆今回の報告会はいつもと違う雰囲気に陥った。般若心教の合唱とは、ありがたいような、ありがたくないような、実に妙な気分である。もし初めての参加者を連れてきた人は、しっかりその点をフォローしておいてください。

◆その中で特に印象に残るものを挙げたいのが、師弟問答である。

◆生徒問「人間衣食住が満たされれば事足りるのに、それでも悟りを求めようとするのは欲ではないか」先生答「悟り求めようとする心あらば悟り遠し。悟り懸命に求むればなお遠し。悟り得るべくなおも求むる心あらば生涯これ成らず」

◆座右の銘にしたくなるようなありがたいおことばだが、地平線会議に悟りほど縁遠いものもなさそうである。一般社会のアウトロー集団地平線会議として期待したいのは、やはりここは破戒僧の登場だろう。渡辺さん、待ってます。次回の報告会、辻説法マホメットの生涯。[のぐちやすお]



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「地平線WEBギャラリー・SPICE!」OPEN
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●インターネット上で開催する「地平線WEBギャラリー・SPICE!」が、「写真展・地平線発」の開催に合わせて、7月11日からいよいよ展示を開始しました。当初は、「地平線発」の出展者の経歴や作品のキャプションを紹介するだけでしたが、現在では「メインギャラリー」もオープンし、冬のチベットを自転車で走破した安東浩正さんやネパールを何度も訪れている杉田晴美さんら、「SPICE!」にわざわざ写真を提供してくださった方々の写真も少しずつ展示できるようになってきました。

●アドレスは「http://www3.big.or.jp/~spice/」。パソコンを持っていない人でも、いまは学校や喫茶店をはじめ、思わぬところでインターネットにアクセスできます。どうぞ、覗いてみてください。検索エンジンへの登録も完了。これからますます多くの人が、全国から見にきてくれるはずです。

●お問い合わせなどは[地平線WEBギャラリー事務局」まで。〒167 東京都杉並区南荻窪2-38-13-205 丸山方/PEG00430@niftyserve.or.jp。



[8月10日現在1万円カンパに協力してくれた人]

佐藤安紀子、向後元彦、向後紀代美、北村節子、賀曽利隆、賀曽利洋子、河田真智子、山崎禅雄、西山昭宜、山田高司、吉岡嶺二、三輪倫子、海宝道義、香川澄推、中山嘉太郎、大沢茂男、久野暢郎、高野久恵、金井重、江口浩寿、田部井淳子、森井祐介、武石礼司、梅沢政弘、岸本佳則、遊友裕、滝野沢優子、武田美佳、武田力、村田忠彦、水谷任子、西村邦雄、保木由佳、飯野昭司、小川正人、藤原謙二、石川秀樹、舟本和子、田中雄次郎、久保田賢司、在田加代子、相川八重、相川和加子、高野孝子、江本嘉伸、江本くるみ、丸山純、北川文夫、小島淳一、埜口保男、宮寺修一、杉田晴美、張替純二、森田昌弘、加世田光子、森田洋、坂下哲之、花崎洋、河村安彦、土屋守、中村理英、池本元光、菊地敏之、金守達也、野々山富雄、松本栄一、神長幹雄、花岡正明、岩淵清、井口亘、河野昌也、古橋稔、桜井紀子、長谷川絹子、森國興、長迫幸成、本庄健男、岡田典子、斉藤晃、斉藤則子、尾浜良太、那須美智、佐々木眞紀子、長房宏治、山田まり子、出口昌哉、九里徳泰、川島好子、若木美枝、池田朋之、柴田美佳子、長田憲二、松田仁志、岸本実千代、今里好美、野々山桂、鹿内善三、坂本勉、難波賢一、中川淳、小松尾幹愛、西山佳子、野地耕治、島村智子、近山雅人、久島弘、山本千夏、斉藤政喜、森田友江、井川等視、山田佳範、近藤淳郎、秋元一浩、土屋達郎(敬称略)





■今月の地平線報告会の案内(絵と文:長野亮之介/イラストのなかにある手書き文字)

地平線通信213裏表紙

8/29
FRIDAY
6:30〜9:00 P.M.
アジア会館(03-3402-6111)
\500



アムール河の岸辺で世紀末中国を想う

今年5月。中国の黒龍江(アムール河)に、森田靖郎さんはひたすらルアーを投げこんでいました。狙うは皇帝魚(チョウザメ)です。1988年に同地を訪れて以来、この大物釣りを夢想し、ひそかに腕を磨いてきたのです。

竿を降り続ける森田さんの脳裏に去来するのは、この四半世紀に渡って追い続けてきた、変わりゆく中国の姿でした。天安門事件(1989)から香港返還(1997)に至るこの8年間は、特に変化が激しく、中国の動きは世界情勢の核となってきました。密航事件などで日本人の日常生活レベルでも影響が出ています。その渦中からルポルタージュを発表してきた森田さんが、ひと息ついて実現したのが、この釣り旅でした。

滞在中、地元のホーチャ族の漁民が網で捕った皇帝魚は、全長2m70cm・220kg。価格は88年の10倍です。辺境にまでおよぶ市場経済の影響を実感しました。

今月は森田さんに、三題噺で現代中国の動きをわかりやすく語って頂きます。「天安門事件と香港返還」「密航列島」そして「アジア釣り紀行・皇帝魚に挑む」の3題です。会場では、ホーチャ族の、サケ皮の服も初公開。盛だくさんの夏休みスペシャルです(文と絵・長野亮之介)。

●森田靖郎の最近著
「密航列島」(朝日新聞社刊)\1700
「香港返還と天安門事件」(原書房)\1800



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