■Part 2…[写真展・地平線発]を開催するために……2



●●写真展開催に必要な経費


【最低限必要な経費とオプション的経費】

どんなイベントもそうですが、写真展も予想以上に費用がかかるものです。自力でやる分が多くなれば、それだけ経費を節約することができるので、ここでは最低限必要となる「基本パッケージ」と、必要に応じて選択・調節できる「オプション」に分けて考えることにします。



【基本パッケージ】

基本パッケージには、以下のものが含まれています。


◆1. 作品貸与料
これは、全229点の作品+関連諸パネルの貸し出し料という扱いですが、実質的には基本料金と考えてみてください。作品やパネルの制作から維持・管理、さらには問い合わせへの対応などの連絡業務まで、[写真展・地平線発]に関係して、日常的にもかなりの時間と手間と費用が必要です。こういった経費は独立した項目としては立てにくいので、貸し出し料というかたちで請求させていただくことにしました。
 
なお、原則的には、全229点を一度に動かすことを前提としています。作品はサイズごとに番号順に倉庫に保管してあり、そこから何点かを選んで運びだそうとすると、搬出費に加えて、未使用分を戻す際にまた搬入費がかかるなど、余計に費用がかかってしまいます。作品がしばらく出払っていても、月極めの管理料は支払わねばなりません。展示作品が少ない場合には安くしたいのはやまやまですが、現段階ではむずかしいと考えてください。
 
内容・テーマや期間、運営スタイル、緊急度などに応じて35万円〜70万円という数字が概算として出ています。なお、これはあくまでも非営利で[写真展・地平線発]を開催していただける場合にかぎります。
 
◆2. 作品運搬費
梱包をして発送する費用。基本的に、往復とも運送業者のトラック便を使います。戻す際の梱包は、主催者側でやっていただくことを前提としています。近接した会場で順送りに開催する場合などは、いちいち東京に戻さないほうが安くなるかもしれません。運搬中の損害保険料も含まれています。梱包のやり方や手間、運搬方式、距離、保険料などによって10万円〜50万円(離島などの特殊なケースは除く)と見積もられています。
 
◆3. 写真展カタログ・20冊(無料)
主催者側で、事前の交渉・根回しなどに使っていただく分で、20冊分は無料で差し上げます。これを見ていただければ、写真展を開催してみたいという夢がふくらむことでしょう。
 
◆4. 写真展カタログ・来場者分(買い上げ分)
会場での配布・販売していただく分です。カタログのない写真展というのは、考えられませんし、とくに全作品を展示できない場合は、カタログの存在は大きな意味を持ちます。希望者の手に必ずカタログが渡るよう、ご配慮ください。
 
販売を主催者側で担当していただくことになるので、来場予定人数分をあらかじめ買い上げていただく方式をとるのが、おたがいに処理しやすいでしょう。20冊ずつのパックになっていますので、未開封分は返品可能です。1冊あたり400円でお分けします。通常は500円で販売していますので、その価格で販売していただけば、主催者側には1冊あたり100円の利益が出ます。頒布価格については主催者の判断にお任せしますが、1冊1000円を越えないようご配慮いただきたいと思います。
 
◆5. 地平線会議が発行している書籍(買い上げ分)
地平線会議をより知りたいという人のために、地平線会議が発行している書籍の販売にご協力ください。金銭授受=責任問題がからむので、これもいったん主催者側で予定分を買い上げていただき、販売をお願いしたいと思います。もちろん、余った場合は返品可能(未開封分のみ)ですし、ストックがなくなった場合は、追加発送もいたします。写真展の後半に在庫切れでまだストックが届かないような状況になった場合でも、予約販売をするなどして、確実に読者の手に渡るようご配慮ください。
 
買い上げ価格は、『地平線から』各巻を1冊1000円、『地平線の旅人たち』は1冊1700円でお願いし、『地平線から』の頒布価格は1冊1500円としてください。『地平線の旅人たち』は書店で販売している一般書籍で、定価は2136円+税となっています。地平線報告会などの地平線会議関係のイベントでは、会場特価として2000円で販売していますが、定価の範囲ならいくらで販売していただいてもかまいません。
 
『地平線から・1983』と『地平線から・vol.6』は5冊ずつ、『地平線から・vol.8』と『地平線の旅人たち』は、10冊ずつを梱包の単位とします。
 
『地平線データブック・DAS』(頒布価格は3000円)は、在庫僅少のため、見本を置くにとどめ、申し込んでいただいた方に地平線会議のほうから直接発送するようにさせていただきます(送料は地平線会議で負担)。申込書の付いた案内チラシを用意していますので、これを希望者にお渡しください。代金は郵便振替でお支払いいただきますので、主催者側が金銭授受に関わる必要はありません。



【基本パッケージでなにができるか?】

「基本パッケージ」は、あくまでも自力で写真展を開催していただく場合を想定しています。全229点の作品がどーんと届くだけで、それを会場に搬入し、梱包を開き、展示するのは主催者サイドの作業になります。会場のどの壁面にどの作品を展示するかなどもお任せしますし、撤収・返送もやっていただくかなくてはなりません。案内葉書やチラシなどの広報用印刷物の作成も、主催者の側で用意していただくことになります。



【基本パッケージのメリット・デメリット】

すでに写真展などのイベントを開催した経験がある組織や、あらかじめ代理店や施工業者が指定されているケース、さらに余分な費用をかけずにこぢんまりと思い通りの写真展が企画・実施したい場合などを想定して用意したのが、「基本パッケージ」です。初めてこのようなイベントを手がける場合などは、かなりの苦労を強いられることもあるでしょう。ただし、それはひじょうに有意義な、かけがえのない体験として残るはずですが。

ノウハウやマンパワーが足りないような場合には、実行委員会・東京の構成メンバーであるノヴリカが、作業を代行・サポートするオプションを用意しています。



●●実際に発生する作業と代行にかかる費用


【自前でやるか、専門家に任せるか】

「基本パッケージ」が届いただけでは、写真展にはなりません。実際には開催に向けてさまざまな作業をおこなわなければならず、会場の広さや状況によっては、専門家の手を借りる必要が出てくるかもしれません。以下、各作業の内容について解説します。イベントの経験がない場合や代理店・施工業者などが決まっていない場合には、実行委員会・東京の構成メンバーであるノヴリカが担当することも可能です。



【その他の経費項目】(オプション)

 

◆1. 企画展示
作品全229点+関連パネルを会場のどこにどう展示するかを決定し、施工の際に手伝いの人たちや業者にきっちりと指示しなければなりません。頭のなかのイメージをもとに、あらかじめ図面上で何度も試行錯誤を繰り返してようやく形になっていく困難な仕事で、展示作品についての深い理解やデザイン的なセンスはもちろん、観客の流れをどう誘導するかなど、実際にイベントを手がけた経験がものをいう部分です。大きな会場では、専門家の力を借りるほうが無難でしょう。素人が担当することも不可能ではありませんが、文化祭の展示レベルになってしまってはせっかくの写真が台無しになりますから、注意が必要です。照明や受付の場所などの会場レイアウトも、これに含まれます。
 
ノヴリカが担当する場合は、会場の広さや展示点数、壁面の状態、照明や装飾の用意、下見や打ち合わせの回数などに応じて、通常10〜100万円の範囲で受けられるだろうとのことです。非営利の手づくりでやるような場合は、企画を進めていくうえで相談にのったり、独自に考えた展示計画にたいするアドバイスも実費ていどでやってくれるそうですから、相談してみるといいでしょう。
 
◆2. 展示施工・搬出
作品やパネル、装飾、照明器具などを実際に会場の壁面や天井などに取り付ける作業です。展示専用に用意されたスペースなら素人でも不可能ではありませんが、壁の材質や構造によっては、専門の業者でないと手が出せない場合もあるかもしれません。消防法の規定を守り、来場者の安全にはじゅうぶん注意してください。また、写真展終了後に作品を収納・梱包し、搬出する作業もやっていただかなくてはなりません。これも、あるていどのマンパワーが必要となるでしょう。
 
ノヴリカが担当する場合は、会場の広さや難易度、壁面の状態、さらに専門業者をどこから派遣するかなどで大きく金額が異なってくるそうで、とりあえず10〜120万円ぐらい(材料費などは別途)という数字が提出されています。
 
◆3. 案内状制作
写真展の開催を告知するためには、ポストカードやチラシなどの案内状を用意しなければなりません。その制作費(デザイン・コピー・写真などの手配)と印刷費がかかります。さらにダイレクトメールとして発送したり、街頭で配布するなどの際にも費用が発生します。ノヴリカでは、ポストカードの1000部の制作費と印刷費で10万円〜15万円というセットを用意しています。
 
◆4. 講演会などの手配
写真展と連動して、講演会やシンポジウムなどを開催するケースもいくつかありそうですが、足代や宿泊費に加えて、謝礼(講演料)のことも考慮しておいたほうがいいでしょう。講演者が地平線会議の同人の場合は、かなり安く納めることができると思います。講演会やシンポジウムの告知に必要な印刷物の制作・印刷なども別途必要です。会場費や音響・映像設備の使用、垂れ幕やパネルの用意、広報宣伝活動など、内容によっては専門の企画会社を通したほうがいい場合も出てくるかもしれません。
 
◆5. 連絡費・交通費
東京の実行委員会との通信連絡費は、あるていどは基本料金(作品貸与料)のなかで吸収できます。主催者側が上京したり、東京側が打ち合わせに出向くる交通費などは、別途考えておかなければなりません。写真展の規模やスタイルに応じて、かなり額が違ってくることでしょう。発生した費用をどこが持つかなどは、やはりケース・バイ・ケースで処理することになります。



【オプションをうまく組み合わせると安くできる】

以上の1.〜5.までの業務をすべて主催者側自身が担当するのはたいへんです。自分たちでできるところはやり、あとは専門家の手を借りるのが現実的だと思います。手作りでやれる部分と、専門家に任せる部分の見きわめをきちんとやり、マンパワーをうまく活用してください。



【手作り派のためのミニマムパッケージも検討中】

写真展としてのクオリティを重視したために、手作り派のためにはちょっと敷居が高くなってしまったのは、じゅうぶん承知しています。まだ少し先になりそうですが、運営全般をすべて自力でやっていただくことで、ポケットマネーを持ち寄ったぐらいの金額で写真展が開催できるようにならないかと、検討しているところです。

企画、広報活動から梱包、運搬、搬入、設営、搬出まで、運営に関わるいっさいを主催者側で責任をもって担当していただくことができれば、もう少し安い料金設定が可能かもしれません。全229点を展示しようとすると経費がかかってきますので、出展作品の点数をかなり減らして「ミニマムパッケージ」を用意したらどうかという意見も出てきました。ただし、作品の管理について全責任を負っていただくことになりますので、損害保険に入るなどの事前の準備とマンパワーの確保が、通常のケース以上に必要になってくると思われます。

みなさんから持ち込まれる企画がどのていどの会場を想定しているものが多いのかがわかってきた時点で、再考してみることになっています。


●●地平線流の柔軟な発想で


【地平線会議のネットワークがさらに広がっていくきっかけに】

ここまでこの「手引き」を読んできて、写真展の開催にこぎつけるまでのプロセスのたいへんさや発生する費用を知り、びっくりされた方も少なくないことでしょう。じつは東京の実行委員会自身も、実際にいくつか手がけてみて、予想をはるかに上回る労力と出費を強いられたのに驚いてしまいました。

しかし、ここで述べてきたのは、あくまでも標準的な規模やスタイルを想定したものです。フィールドワーカーならではの創意工夫で、これまで不可能を可能にして19年間活動を続けてきた地平線会議にとっては、いくらでもやりようがあるのではないでしょうか。ぶらりと旅に出るような気持ちで取り組むにはちょっと手強い相手ですが、写真展を開催するというのは、エクスペディションを送り込むのと似たようなところがあるように思います。チャレンジングな気持ちと柔軟な発想で、実現に向けて進んでいきたいものです。

[写真展・地平線発]をきっかけにして地平線会議のネットワークがさらに広がり、全国の仲間たちと新たな交流や協力関係が生まれることを期待しています。


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