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■10月の地平線通信・203号のフロント(1ページ目にある巻頭記事)
山の用語で「地図を読む」という表現がある。5万分の1地形図や2万5000分の1地形図を見ているだけで、その地図に記載されている山や沢の地形まで読みとってしまうことである。等高線の間隔からその山の緩急を読み、岩場や滝の記号から沢の様子をうかがう。山の中に入れば、尾根と沢の連なりから、現在位置まで割り出してしまう。熟練してくると、たった1枚の地図から、その山や沢の様子が鮮やかに浮かんでくるという。何の変哲もないただの地図のなかに、これだけの豊かな情報量が隠されている。だから地図は見ているだけでも楽しい。
時刻表にも同じ楽しさがある。一見すると、列車の発着時間の羅列だけのように思えるが、想像力をはたらかせることによって、旅の輪郭が鮮やかに浮かびあがってくる。時刻表を見ているだけで、実際に旅をしているような気になった人もいるはずだ。
『地平線データブック・DAS』も、まさにそうした側面をもつ1冊である。もちろん、地図や時刻表に比べれば、その情報量は比較にならないほど多いし、また構成も各種のコラムを配することによって変化のある作りになっている。コラムだけを読んでいても、充分に楽しめ、学ぶことも多い。
しかし、Part 1の「Emorandum」と「Data And Scraps」、Part 2の「地平線から・第1部全行動」、つまりこのほんの根幹となっている部分は、ほとんど情報の羅列といっていいだろう。Emorandumで、その年のエポックメーキングが語られたあとは、えんえんと短い情報が続くだけである。しかも探検・冒険・登山・行動というくくりはあるものの、それぞれの情報になんの脈絡もない。ただ単なる羅列である。
それでいて、見ているだけで楽しくなるのはなぜだろうか。
ひとつには、時代が見えてくることによるのかもしれない。コラムで入力の担当者がたびたび述べているように、探検や登山、行動のなかに時代を反映したものが意外と多いことがわかってくる。一見、なんの脈絡もない情報が、時系列である種の傾向をもっているのである。ちょうどバブル崩壊当時から、環境に配慮したものや個人的な行動が多くなってきているように。そうしたデータの縦(時系列)と横(分野別)を組み合わせ、ほどいてみる楽しみが生まれる。
もうひとつは、具体的な行為を想像できることにある。ひとつひとつに記述は、ほんの2行か3行である。しかし、関連した情報をつけたしたり、想像力をはたらかせることによって、その実際の行動を思い描くことができる。この作業をやりだすと、時間のたつのも忘れて、読みふけってしまう。想像力をはたらかせれば、いくらでも内容がふくらんでくるのである。ちょうど地図や時刻表を「読む」のと同じように。きっとこの本の真髄はそこにあるのかもしれない。
それにしても、丸山純氏をはじめとする資料収集、データ入力を担当された方々の御苦労には頭が下がる。1ページが数ページにもふくらんでくる素材を提供してくれた。
『DAS』に載っている行動自体は、もちろん過去のものである。しかし、それらの行動を追体験することによって、次なる行動はかぎりなく広がってくるような気がする。[神長幹雄]
一橋大山岳部時代、北穂高岳滝谷に初登攀記録を残した中村保さんの旅の眼線がわかる美しいスライド群だった。1990年3月以来、11度に及んだ「横断山脈」への旅は、もっぱら休暇をフルに使い、四輪駆動車を駆っての行動だった。中村さんのほかは、運転手、通訳の二人だけ。
日本にいる時は、もっぱらこの地域を探検した先人たちの英文記録に読みふけっている中村さんは、通訳に「ガイド役は要らない。私の言ったとおりに動いてほしい」と、毎回念を押したという。このエリアを知るのは自分、「案内される」旅ではその目的を果たせない、と考えたのだろう。また、それだけの蓄積を自分に課したわけだ。
無論、金はかかる。現地での費用は人件費、ガソリン代、宿泊代などで、大体「一日2万円ぐらい」だったそうだ。香港勤務の地の利を活かして55才から始めた中村さんの旅は 今春、労作「ヒマラヤの東」(山と渓谷社刊)にまとめられた。詳しいことはこの本を読んでほしい。
報告会で「旅の途中、怒ってはいけない、と自分に言い聞かせましたが、それでも何度か怒ってしまった」と本音を吐露したあたり、中村さんのような目的意識のはっきりした旅の、現地でのコミュニケーションの難しさが伺われた。自分にとっては何物にも代えがたい体験であっても、他人にとってはとるに足らないものであることは十分あり得る。そういうちょっとした意識の差が貴重なチャンスを失わせることも、旅では普通に起きることだ。そんな時、旅人は理不尽な怒りに襲われるのだろう。しかし、「欧米人に較べて日本人は怒りっぽい」と言われると、考え込んでしまう。確かにそういう人は多いが、もしかしたら、それは世代によって違うのかもしれない。
報告会では、「飛び入り出演」で、中村さんの友人、盛田武士さんが今年5月に現地で実体験した「雲南・最奥地に見たキリスト教会」という貴重なスライド報告をしてくれた。チベット人たちが仏教ではなく、キリスト教会で祈りを捧げる姿は衝撃的だった。虚を衝かれた、という感じがした。
61才になった中村さんは、報告会の四日後、梅里雪山の馬での一周の旅に出た。(ホライゾン)
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7月の大集会にむけて一万円のカンパをお願いしましたところ、大勢の方が賛同下さり、本当に感謝しております。集会が終わった後もまだカンパを送って下さる方々があり、うれし涙を流しております。先月の通信で「金額や使途などの会計報告を出します」と書きましたので、報告をいたします。
1万円カンパ(5万円下さった方もおります)に応じて下さったのは95人と犬1匹、総額は107万円になりました。7月の大集会は入場料収入と会場使用料の差は10万円の黒字になりました。事前には会場費が払えるだろうか、Tシャツの支払ができるだろうか、DASの印刷費が払えるだろうかと、夜も眠れないほどで心配をしていたのですが、終わってみるとTシャツ支払の立替分38万円(18万円売り上げたので現在の立替は20万円))のみになりました。DASの支払は1万円カンパには頼らず、別のところから借り入れました。(まだ在庫が50万円分ある。これを早く返してきれいな体に戻りたいと丸山編集長は毎夜泣き暮らしているとのウワサ)
ということで地平線会議としては、始めて貯金通帳に7桁の数字がならびかかりました。しかし急激に増えた通信送付人数と勢いあまった12ページ通信の送料が1グラムオーバーで90円になったため、蓄えは「アッ」という間に減ってしまいました。「1万円は7月の集会準備のための金で、通信費とは別だ」という意見があるのは承知なのですが、カンパをお願いした上に、なお通信費もという訳にはいきません。現在92万円〔立替分が返ったとして・117万―18万(3カ月分通信・600人)―7万(紙・封筒代)〕あります。毎月6万円程度の通信費用がかかりますが、これだけあれば一年半はもちこたえることができます。そのころになったら、こんどは20周年記念大集会を企画して、またカンパをお願いしようかなと、密かに考えております。とても「キチンとした報告」とは言えませんが、何卒これで報告とさせていただきたく存じます。ほんとうにありがとうございました。(三輪)
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地平線データブック制作室より
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●ここのところ毎度お騒がせしてきた『地平線データブック・DAS 1988〜1995』ですが、おかげさまで印刷した500部のうちの半分強がなくなりまして、残りはあと220部ちょっと、というところまでこぎつけました。600ページを越える膨大な内容ですし、価格も3000円とずいぶんと高くなってしまったのに、これだけ多くの方に買っていただけて、ほんとに感謝しています。
●これまでも新聞や雑誌などで紹介したいという申し出をいくつかいただいていたのですが、地平線の仲間の手に渡らないうちに品切れになってしまっちゃ申し訳ないと、わざとお断わりしてきました。500部しか刷らなかった最初の年報『地平線から・1979』が、数年後にはもう“幻のコレクター・アイテム”となってしまったという苦い経験もあって、まずはこの本の価値がわかる地平線のメンバーに読んでもらおうと思ったからです。
●ところが、先月の地平線通信をお届けして以来、新規の申し込みがほとんどありません。どうやらこのあたりで、地平線通信の読者のみなさんにはひととおり行きわたったと判断してよさそうです。そこで、今月後半あたりから、外の世界に向かって少し積極的にアピールしていくことにしました。紹介される媒体や記事のスタイルによっては、一気に申し込みが殺到するという事態も考えられなくもありません。忙しさに紛れてまだ注文してなかったという方は、ぜひぜひ、これを機会にお申し込みください。
●そうそう、古くからの地平線の仲間で、この人なら当然買ってくださるはずだとこちらで心の底から信じ込んでいる方のうち、まだ50名近くがお求めいただいていません。○○さん、△△さん、なくなっちゃってもいいんですかぁ? それから、代金を払っていただいてない方が、まだけっこういらっしゃいます。郵便局まで出向くのはたしかに億劫ですが、なにとぞよろしくお願いします。
★地平線データブック制作室
東京都杉並区南荻窪2-38-13-205(丸山純方)/〒167
PEG00430@niftyserve.or.jp
東京都青梅市二俣尾2-421-1(新井由己方)/〒198-01
HAG01256@niftyserve.or.jp
★郵便振替[00110-7-109413 加入者名:地平線会議・DAS]
●最後に、まとめてお詫びを。まず発送の遅れですが、担当者がしばらく留守にしていたことなどがこれまで何度かあって、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。郵便振替での入金をもって申し込まれた場合、振込票が届くまでに3〜7日かかりますし、すでに送付した分の支払いなのか新規申し込みなのかがわからず、確認するまでに時間がかかってしまいます。振込票の通信欄にひとこと書いていただけると、処理が早くできます。
●現在、郵便や電子メールで申し込みがあった場合は1〜3日後、郵便振替だけでの申し込みの場合でも5〜10日後には発送しています。もし注文したのにまだ届かないという方がいらっしゃいましたら、なにかの手違いが生じているはずですので、ご一報ください。
●それから、申し込みの際にお手紙を同封してくださる方がいらっしゃいますが、多忙に紛れてなかなか返事を差し上げることができず、心苦しく思っています。なにとぞご容赦くださいますよう、お願いいたします。
●もうひとつ。これまで『DAS』を買っていただいた方にはもれなく地平線通信をお送りしてきましたが、地平線の活動はそれぞれ別会計となっていますので、このあたりが限界です。残念ながら、この号でひとまず止めさせていただきます。今後も地平線通信を購読したいという方は、ぜひぜひ、通信費カンパ(2000円)をお寄せください(郵便振替 00100-5-115188 加入者名:地平線会議)。
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アジア会館がスクリーンしか用意してくれないので、毎月の地平線報告会のたびに、旧式の重たいスライドプロジェクターを運ばなければなりません。最近、地平線も高齢化したのか、「よっしゃ、俺が持って帰ってやる!」という元気な若者がいなくなり、互いに押し付けあった結果、江本御大がかついで帰った月もありました。これは切実な問題です。どなたか、「我こそは」と名乗り出てくれる人はいないでしょうか? 1回だけでもかまいません。1万円カンパだけでなく、こうした肉体による奉仕も、地平線会議は大歓迎です。あるいは、アジア会館の近くにプロジェクターを置かせてくれる事務所などをお持ちの方、いらっしゃいませんか?
第4回日本山岳耐久レース(長谷川恒男カップ)の結果
●三輪さんに挑戦状を送りつけたのは昨年のこと。その舞台にこのレースを選んだのはぼくの選択だった。平地のフル・マラソンや超長距離のレースでは勝負にならないので、折衷点として選んだのがこのレースだった。ところが昨年はちょうどエントリーの時期に出張になって、帰国後に問い合わせをしたらすでに定員オーバーとのことでぼくの不戦敗と相成った。
●満を持して駆けつけた今年の大会。ぼくの山岳レースの経験は決して十分ではないし、はたして完走できるかどうかという不安も少なからずあったが、1カ月前の野辺山ウルトラ・マラソンの50kmの部で8位に入った勢いで果敢に挑戦した。
●いよいよスタートである。今回のぼくの作戦は、『前半の三頭山で三輪さんに1時間の差をつけること』である。三輪さんは下りが得意で、ぼくは下りが大嫌いである。おまけに今回も雨が予想されるのでその下りはかなり悲惨になることが予想される。スタート直後は三輪さんに先行されたものの1時間くらいで追い抜いて、目標の前半6時間半には及ばなかったが6時間50分で三頭山に到着した。このあたりは快調で、約42kmの月夜見山チェック・ポイントでは56位まで上がった。
●しかしながらぼくの勢いはここまでだった。チェック・ポイント直後のズルズルの斜面で何度もころび、御前山の登りにたっぷりしごかれ、もうあとは平坦な道すらも走れずにどんどん追い抜かれるだけだった。三輪さんに抜かれたことは気がつかなかったが、ゴールしたらあの笑顔が待ちうけていた。三輪さんに9分遅れの15時間8分、89位のゴールだった。江本さんは『予定通り』の西原峠でのリタイア。何とか三輪さんの目の黒いうちに一矢を報いたいものだが、こんなレースはもうたくさんである。雨の山道を夜中に走るなんて、延暦寺の坊主にまかせておけばいいのだ!![松田仁志]
会場:武蔵村山市民会館小ホール(TEL:0425-65-0226)
特別ゲスト:小嶋一男氏
フィリピンの舞台裏 「世界中どの国にもウラの社会があって、これがオモテ以上にその国民性をよく表わしているんですよ。特にフィリピンは、裏社会を見ないとわかりにくい国です」。そう話すのは、日本電波ニュース社の高世仁さん。約9年間の東南アジア特派員生活の中で、最も深く関わったのがフィリピンでした。 囚人の腎臓倍場問題や、パスポート偽造問題、頻繁に起きる保険金殺人事件などを追っているうちに、裏社会の住人達と接触します。中でも最大の組織が、“シゲシゲスプートニク”。高世さんは彼等の動きを追い続けました。軍部・政権の中枢にまで組み込まれたこの組織の実態を取材するうちに、「裏社会=悪人」という単純な解釈ではすまないフィリピン社会の仕組みに目が開けてきたのです。 「ある意味で愛すべき人達の住む、魅力のある社会なんですよ。彼等の役割を理解しないと、フィ林ピン社会は語れないんです」と高世さん。今月は高世さんをお招きし、日本とも縁の深いフィリピンに鋭いアプローチをしてみたいと思います。 |
地平線通信203号外
高世仁さんの「フィリピンの舞台裏」は、第5火曜日、29日です。通信に日付けを入れ忘れてしまいました。コメンナサイ! いつものアジア会館(3402-6111)にて、\500円。絶対来てね!
「地球北から南から」
95年夏に国際犬ゾリ隊が採集した北極の環境データから、地球環境を考える。隊員の1人で、地平線の200回イベントでも「世界の犬」について発表した高野さんの講演とスライド。
11月1日(金)
トウキョウウィメンズプラザホール
18:00開演 \500
問い合せ:HAT-J:03-3401-4354
75回報告者の江口さんが作ったお米です。ご希望の方は直接申し込んでください。送料別。
コシヒカリ(合鴨農法・有機無農薬)
10kg=5500円
ユメカオリ(除草剤1回・低農薬)
10kg=4500円
〒347-01 埼玉県北埼玉郡騎西町大字中種足1118
Tel/Fax 0480-73-2529
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