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(1) 第22版 嘲 覗 新 聞 (午刊) 1993年2月10日 水曜日
嘲覗新聞荻窪支局
新井由己+三五康司+丸山純+丸山令子
東京郡荻窪村大字杉並字南荻窪x-xx-xx-205
来月通信費緊急募集か?
報告会参加者数、2年連続前年割れのあおり受け
地平線の財政、ついに破たん
数字に現われた停滞ぶり
金と人の不足、まざまざ
問われる報告会の存在意義
日本人の海外渡航者が年々増加してきたのにもかかわらず、この2年間の地平線報告会の参加者数が前年比で20〜30%の割合でマイナスとなっていく「なだれ現象」が起こっていることが、このほど本紙の調べで明らかになった。このため、報告会の収入がかつてないほど極端に落ち込み、ついに見栄を張り続けてきた地平線財政の破たんが、決定的にとなったようだ。
▼報告会参加者数推移
地平線通信の印刷・発送には毎月約6万円が必要なので、報告会の会場費(500円)で完全に補てんするには、月平均120人集めなければならない。90年までは参加者が徐々に上昇したおかげで、貯蓄してあった通信費を使う分が毎月1人当たり36円と少なくて済んでいた。ところが91年から参加者数が急激に落ち込み、通信費の使用分が1人当たり55円と、五割も負担が増えることになった。前回の財政破たんで通信費の緊急カンパを募ったのは90年7月であったので、単純計算をしても、もうそろそろ通信費が底をつく時期だと考えられる。
このような厳しい状況に追い込まれた点について担当者は、「今まで問題はなかったが、今後、通信費と会場費の関係を再度検討したい」と話しているが、もともと世間と大きくかけ離れた金銭感覚が支配する地平線会議だけに、相当思い切った意識改革がまず必要とされよう。
参加者数がピーク時の90年を振り返ってみると、まず年報「地平線から・第8巻」が発刊されて発刊記念大集会が開かれ、2日間で288人の参加者を集めた。地平線通信でも「解放区」が設けられ、新聞クリッピングの転載や制作スタッフからの提案、呼びかけなども多かった時期である。7月には会計報告も行なわれている。地平線会議全体の勢いが、報告会参加者数に表われていると言えよう。
とくに昨年の落ち込みぶりには目をみはるものがある。報告会が火曜日に変更されたことも大きいが、「行動しない人間は来なくてよい」という9月のZ発言がさらに追い打ちをかけたとも言えるかもしれない。このままででいくと、96年には報告会参加者数がマイナスに転じることになる。創設メンバーの1人は「大変くやしい。若手がだらしないから、こんなことになった。いっそ解散してしまったほうが潔いのでは」と沈痛な面持ちで語っている。
スタッフ・設備を引き継ぎ、再出発
押賣新聞、当社が吸収合併
たらい回しの「問題児」、やむなく受け入れ
華々しい創刊に続いて謎の白紙を発行したあと突如として姿をくらました押賣新聞社を、当社経営陣が買収していたことがこのほど明らかになった。
タブーとされていた地平線の暗部に鋭くメスを入れ、また神をも怖れず果敢に宗教団体に挑戦していった押賣の姿勢は一部で高く評価されたが、そこは地平線出身者の悲しさ、経営的な見通しはまったくなく、創刊号の発刊からして、財政破たん間近であった地平線通信に印刷費をたかっていたという。また、某宗教団体から抗議のファクスが殺到して編集機能が完全に麻痺していたとの噂もあり、このような「問題児」を社内に迎え入れることに対して、本紙編集部には疑問の声が渦巻いている。
今後は編集主幹を中心に、当社経営陣に真意を質していくつもりだが、すでに一部のスタッフが押賣ノリで記事を書き始めるなど、買収した側が逆に乗っ取られるという奇怪な事態が発生して、社内は恐慌状態に陥りつつある。
折々のうた | 誰とても 留まるべきかは 旅の会(え)よ 言の葉毎に 夢の痕染む(旅游子) |
来し人はいつしか去り、胸に宿りし熱もやがて醒める。現世で最もうつろい易きは、旅人の心なのかもしれない。わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ。いぇい。 〔松鶴家チートス〕 |
「埼玉で百姓をしている渡辺剛さんですが」「何でぇ、やぶから棒に」「この間、報告会で話を聞いて驚きました」「徒歩で世界一周したお人だな」
▼「八三年五月の帰国です」「で、何に驚いた」「『地平線会議にはほんとうの冒険家はいない』と渡辺氏は言っています」「百姓の視点から見ると、そうかもしれねぇ」
▼「ときどき、行ってきたというだけの報告があります」「話としておもしろけりゃ別にいいだろ」「いえ、情報が手に入りやすい時代だからこそ、そこで何を感じたのかが重要なんです」
▼「体験を聞けるだけで満足できた時代は、もう遠いのかねぇ」「旅と冒険はその経験と教訓を日々の暮らしに生かしてこそ本物の輝きを持つ、とヒラリー卿も言ってます」「旅から帰った後のほうが重要ってぇことか」
▼「今の時代の地平線会議の存在価値は、そこにあると思います」「旅を日常に結び付けられるお人こそが、現代の冒険家といえる時代なんだな」
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