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■高世仁さん、『娘をかえせ 息子をかえせ』を出版
『スーパーKを追え』に続き、北朝鮮による拉致事件をおいかけたドキュメント。
●地平線HARAPPAのログより
01750/01750 PEG00430 丸山 純 高世仁著『娘をかえせ 息子をかえせ』
( 1) 99/05/13 21:22
●これも先月の地平線報告会が著者から直接買った本ですが、高世仁さんの『娘をかえせ 息子をかえせ――北朝鮮拉致事件の真相』(旬報社)を読みました。タイトルと高世さんの経歴からわかるように、これはこの連休中に決起集会が開かれた、北朝鮮による拉致事件を追いかけたドキュメントです。例の国籍不明の高速船を海上保安庁と自衛艦が取り逃がした直後だけに、関心を持たれた方も少なくないことでしょう。
我が家にはテレビがないので、これまで断片的に新聞などで読むだけでしたが、高世さんは昨年暮れまで在籍した日本電波ニュース時代に、ずいぶんこの問題を追いかけ、「ニュースステーション」などで取材した番組がちょくちょく放映されているんですね。
●この本の中核を占めるのが、1977年に新潟で学校からの帰宅途中で行方不明になった、当時中学1年生だった横田めぐみさんの話です。概略は知っていましたが、あらためて事件の異様さと、娘を失った両親の苦しみがせつせつと伝わってきて、印象深い本となりました。
巻頭には、父親の滋氏の「序言」が置かれていますが、死亡したと断定されたほうが、まだその後の家族たちの人生は楽だったのではないかと思えるほどです。いつめぐみさんが帰ってきてもいいように、ずっと夜中でもこうこうと明かりを点けっぱなしで寝ていたシーンなど、深く胸を打たれました。
これもぼんやりと知っていただけですが、そのほかにも、福井や新潟、鹿児島で、次々とカップルが突然行方不明になるなど、何組もの人たちが拉致されているんですね。また、ヨーロッパ留学中にだまされて連れてこられた日本人たちもけっこういるようです。そして、どの家族もそれぞれ悲痛な思いで20年にもおよぶ毎日を送ってきました。
●周囲を海に囲まれた島国で、孤立しているというのが日本にたいするイメージですが、とんでもない。彼らはやりたい放題。個人的には国境なんてくそくらえだと日頃思っている私ですが、警備の手薄な、北朝鮮に舐められている日本の出入国管理のやり方に憤りすらおぼえるような気持ちになってしまいました。日本の主権が侵害されていると、強く感じます。
また、レバノンの女性が4人も、日本の日立が秘書を探しているからとだまされて、朝鮮戦争中に38度線を越えた元米兵の結婚相手として北朝鮮に連れていかれ、レバノン政府の圧力でなんとか帰国することができたことなども、新しい知見でした。政府が本腰になり、うまく取り引きすれば、けっして望みのないことでもない。ただし、帰国した女性がみんな、夫に秘密にしたりしてその後の生活で苦しんでいるのも、胸が痛みます。
●それぞれの家族のほかにも、韓国に亡命後、命の危険を感じながらも証言を続ける元工作員、党内で苦しい立場になりながら追求の手をゆるめない共産党代議士など、印象的な人たちが登場します。こういう人たちの努力が、やがては解放へと結び付くのではないかと期待できます。
事実の重みに引きずられるようにしてぐんぐん読んでしまい、途中でページを閉じることがどうしてもできませんでした。北朝鮮問題というと、地平線では惠谷治さんが知られていますが、この高世さんの本はまた別の角度から、あの国の本質に迫っています。映像ジャーナリストならではの、テンポの良さと対象へのシャープな迫り方が感じられます。ぜひ一読を勧めます。
4月の地平線報告会で、自著を紹介する高世さん。→
高世仁
娘をかえせ 息子をかえせ――北朝鮮拉致事件の真相
旬報社
1500円
ISBN4-8451-0580-2
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