The Chiheisen News 2006-08

■関野吉晴さんの『グレートジャーニー全記録』、ついに刊行。
〈移動編…我々は何処から来たのか〉と〈寄り道編…我々は何処に行くのか〉の2部構成。毎日新聞社から。
93年の12月、南米最南端のナバリーノ島をカヤックで漕ぎ出してスタートした関野吉晴さんの「グレートジャーニー」。700万年前に誕生したといわれる人類の偉大なる移動・拡散の足跡を、徒歩・自転車・カヤック・犬ゾリなどの人力や畜力だけで逆方向からたどろうという、途方もない試みでした。そして02年2月にタンザニアのラエトリに無事到着してゴールを迎えます。

地平線報告会でも何度か話していただいた、その足かけ10年にわたる総計約5万3000キロの旅の模様が、ついに『グレートジャーニー全記録』としてまとまりました。南米からアフリカまでのルート上の体験を綴った『移動編…我々は何処から来たのか』と、旅を中断して各地で自然と共に生きる先住民社会を訪れた『寄道編…我々は何処に行くのか』の2部作で、それぞれA5判・本文2段組みで各400ページ近い大著です(『寄道編』にはカラー口絵もあり)。まさに『全記録』と銘打つにふさわしい内容になっています。これまでのように時間軸に沿わずに『移動編』と『寄道編』とに分けた構成の妙のおかげで、他の著作や講演では見えなかったものが浮き彫りになってきたように感じられます。版元は、写真集『グレートジャーニー』全8巻と同じ、毎日新聞社。

なお、表紙の下半分を占める帯、関野さんの本にしては珍しく、タヒチを描いた有名なゴーギャンの絵になっていますが、この絵のタイトルが『我々は何処から来たのか。我々は何者か。我々は何処に行くのか』なのです。関野さんがなぜこの絵を表紙に選び、書名に採用したのか。そこをしっかりと噛みしめながら、グレートジャーニーの成果を味わい、共有していきたいですね。

なお、2003年3月に『南米〜アラスカ篇』が出たまま、長らく待たれていたちくま新書の『グレートジャーニー…地球を這う〈2〉ユーラシア〜アフリカ篇』も、昨年11月に刊行されています。旅の途上、各地で出会った印象深い人々の暮らしぶりを簡潔にまとめたもので、カラー写真も数多く掲載され、ミニ写真集といった雰囲気に仕上がっています。価格も手頃ですし、『全記録』を読む際に手元に置いておくと、あの地平線報告会の感動がまざまざと蘇ってくることと思います。
[丸山]

我々は何処から来たのか…グレートジャーニー全記録〈1〉移動編

著者:関野吉晴
出版社:毎日新聞社
発行日:2006年01月30日
ISBN:4620317527
価格:本体3,800円+税

第1章 マゼラン海峡横断
第2章 パタゴニア南部氷床縦断
第3章 南米を行く?アンデスに沿って
第4章 中米・北米を行く
第5章 シベリア横断
第6章 シルクロードを西へ
第7章 アフリカへ

我々は何処に行くのか…グレートジャーニー全記録〈2〉寄道編

著者:関野吉晴
出版社:毎日新聞社
発行日:2006年01月30日
ISBN:4620317519
価格:本体3,800円+税

第1章 南米…カワスカルの少女マリア・ルイサ−チリ(プンタ・アレナス)/ウィジチェのカシケ カルロス・リンコマン−チリ(チロエ島) ほか
第2章 中・北米…マヤの伝統を残す全霊祭−グアテマラ(トドス・サントス)/ナバホの国−アメリカ(アリゾナ州・ナバホ居留地) ほか)
第3章 極東シベリア…チュクチの勇壮なクジラ漁−極東シベリア(ロリノ村)/セイウチ祭−極東シベリア(エンメレン村) ほか
第4章 モンゴル・ヒマラヤ…草原の少女プージェ−モンゴル(ウランバートル郊外)/カイラスの巡礼者たち−チベット(カイラス山) ほか
第5章 中東・アフリカ…人類最初の森林破壊レバノン杉−レバノン(ベッカー高原)/モノを蓄えない社会と競争原理1 コエグ−エチオピア(クチュル村) ほか

グレートジャーニー…地球を這う〈2〉ユーラシア〜アフリカ篇

著者:関野吉晴
出版社:筑摩書房 (ちくま新書)
発行日:2005年11月10日
ISBN:4480062661
価格:本体950円+税

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