2005年1月の地平線報告会で、その熱い授業ぶりとチベットに対する博識で強い印象を残した中村吉広さんが、『チベット語になった「坊っちゃん」−−中国・青海省 草原に播かれた日本語の種」を上梓しました。報告会でさらりと語られた内容の背景が手に取るようにわかりますし、改めて中村さんの日本語力の高さをいたるところで感じさせてくれます。行間からにじみ出る、現在のチベットが置かれている困難な状況も、地平線会議のメンバーなら大きく心を動かされるでしょう。報告会に出た人はもちろん、参加できなかった人にも、お勧めです。[丸山]
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チベット語になった『坊っちゃん』
−−中国・青海省 草原に播かれた日本語の種
著:中村吉広(なかむらよしひろ)
ISBN:4-635-33039-7
定価:本体価格1600円十税
発行:山と溪谷社
[目次]
- チベットの海−−はじめに
- 序章 拝啓、さだまさし様
- 第1章 チベットとの出会い
- 或る留学生との交流/オウム真理教のチベット文字/チベットの近さと遠さ/未開放地域への扉
- 第2章 チベット留学
- 名誉校長は有名人/改革開放経済下の教育現場/日中友好とチベット語/我が師との出会い
- 第3章 チベット語の可能性
- 無駄ではなかった試行錯誤/飛んで火に入る夏の虫/学聖トンミ・サンポータの復活/アイウエオという宝物/日本語とチベット語の兄弟関係/カタカナという武器
- 第4章 チベットの坊っちゃん先生
- 日本語中心の旗揚げ/『坊っちゃん』の発掘/『坊っちゃん』の登場/『坊っちゃん』邪魔される
- 第5章 息を吹き返したチベット語
- チベット人学生、『坊っちゃん』と出会う/『坊っちゃん』四国に上陸する/『坊っちゃん』色町に行く/『坊っちゃん』第三篇、独立志願
- 第6章 別れの時
- 仕上げの学年末テスト/幻の「バッタ」事件/チベット埋蔵教のように
- 膠着語の回廊−−おわりに
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●地平線通信314号に掲載された金井シゲさんの紹介文
読むべし!「チベット語になった『坊ちゃん』
金井 重
06年はハーイ犬年です。313回地平線会議は、滝野沢さんが映像を駆使して「犬を見れば世界が見える」、そしておなじみ長野画伯のユニークな原画、各頁に犬がいる06年カレンダーが展示されて、会場に彩を添え、さらに、「犬眼レンズで旅する世界」(滝野沢優子12月3日出版)、「チベット語になった『坊ちゃん』」(中村吉広12月15日出版)の新刊書がひらづみされ、行動者の美術・文学・映像と地平線ならではの時空が出現しました。
06年は漱石の「坊ちゃん」が誕生して100年です。地平線の坊ちゃん中村氏はチベットに赴任。明治の坊ちゃんに負けず劣らずの熱血漢、北京語と中央集権の官僚性の大波小波の中で、純情一路、チベット文化を愛し、学生たちに慕われ、チベット語と日本語の類似性に着目。ついに学生たちで「坊ちゃん」がチベット語に翻訳されるまでの物語。「チベット語になった『坊ちゃん』」の主人公です。その波乱万丈の物語は読者のハートを、しっかり握りしめる名著です。
チベットと言えば、学究的江本氏、行動者安東浩正さん、そして地平線にもいるミーハー。ダラムサラではダライ・ラマと握手し、チベットではアニ・ゴンパにステイするシゲ。各界各層にシンパが少なくありません。しかし花も実もある日本語教師。チベットの坊ちゃんは更にたいしたもの。なんと言っても彼の仏教知識と、アジア情勢の理解の深さが下地にあり、果敢な行動力がさわやかです。
明治の坊ちゃんの時代も、文明開化のゼニの世。坊ちゃんは、05年の流行語が「小泉劇場」「想定内」になんと言うでしょうね。そしてきっと平成の坊ちゃんに「君もやるねー」と声をかけるのではないでしょうか。06年の読初めは「チベット語になった『坊ちゃん』」をおすすめします。
坊ちゃんも百歳ぞなもし冬晴るる シゲ
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●『望星』の新刊紹介(書評)コーナー
東海教育研究所の総合月刊誌『望星』の書評コーナーで、丸山が紹介しました。
http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/books/index.html
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