●地平線通信241より
報告会レポート・241
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メコン瀑流航
メコン川源流航行調査隊
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1999.11.26(金) アジア会館
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◆東京農大探検部OBを中心としたメコン川源流航行踏査隊は、この夏、中国・チベットにまたがる未踏のメコン源頭部を世界で初めて漕破した。今回の遠征に至るまでには94年春の源流域偵察にはじまり5年という歳月が流れている。
◆メコン川源流最奥の村である“莫云”から北上し、水量的に航行可能な地点までヤクと馬によるキャラバンを組んだ。メコン川源流付近は、夏とはいえ一日の寒暖の差が30度以上と激しく変化し時にブリザードや突風が吹きつけることもめずらしくなかったという。
◆日本をでてから31日目、富士山よりはるかに高い地点からチベット自治区の昌都まで、高低差1500メートル、距離にして560キロを漕ぎ下った。ドライスーツに身を包みイリジウムで連絡をとりあって、準備・サポート共に万全を期している。今回の旅で隊員を苦しめたのは、切りたった崖が続く上流部での、ポーテージ(一旦上陸し舟をかついだりしながら運搬すること)だった。落石が狭い川の流れを阻み激しい白波と複雑なうねりが交差している最初の瀬では、ポーテージに6時間を費やし、夜遅くまで作業をした上に大岩の上で幕営と大変な労力を強いられている。隊長の北村さん以下、隊員の方々はあまり触れていなかったが、標高4887メートルから3370メートルという高所を下るのは、あまり前例がないのではないだろうか。これはもっと強調されていいはずだ。
◆隊の唯一の女性である山本さんが女性ゆえの苦労について質問されて「わたしが気を使う以上に周りの人も大変だったと思うし、女だからといって苦労したことはほとんどなかった」と淡々と語るのを、神妙な顔つきで聞く仲間の表情が妙に印象に残っている。彼らの川に対する強い強い思いはメコン源流部のみならずこれからも世界中に広がっていくに違いない、今回の報告にはそう感じさせる力強さが確かにあった。[石川直樹]
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