99年4月の地平線報告会レポート


●地平線通信234より

先月の報告会から・234
海を渡る星の唄
石川直樹
99.4.27(火) アジア会館

●「サタワル島」――ミクロネシアのサタワル島は周囲6キロ、人口500人の小さな島だ。この島の航海師マウ=ピアイルグさんは、海図や磁石などの近代計器を一切使わない伝統的な後悔術を今に伝えている。

●「弟子入り」――石川さんはマウに弟子入りし、サイパンから900キロ離れたミクロネシアのサタワル島まで、伝統航海によって帰ることになる。マウと弟子たちが2年かけて作った全長約6メートルのシングルアウトリガーカヌーに、ナビゲーターのマウを頭に総勢10人のクルーが乗り込み帆を上げた。ミクロネシアの逞しい男たちの中では、石川さんはどうしても小さく見えてしまうたった一人の日本人だ。

●「伝統的な航海術」――マウは研ぎ澄まされた五感と知恵と勇気を持って、大海に挑む。航海の間、マウの睡眠は昼間の2〜3時間のみ。星を見つめ、波の姿や音を聞き、風を感じ、ある時は鳥を追い海を渡る。全員がマウを信じるしかない。

●「不安」――サタワルまで四日の航海予定が六日を過ぎても島影は見えてこない。食糧も底をつき、精神に支障をきたして海に飛び込むものも出てきた。高波で海へ振り落とされそうになりながらも睡眠を取らなければならない。それでも、マウを信じるしかないのだ。

●「歓迎」――島が現れた。サイパンを発ってから10日目。島に近づくにつれ、祈りにも似た神聖な女たちの唄声が低く流れてくる。もう既に日は落ちかけていたが、子どもから年寄りまでクルーを迎える島中の人の姿が見える。女たちは船に上がってクルーの体をどんどんと叩き、船を揺さぶる者もいる。無事に帰ってきたクルーは勇敢な英雄だ。マウは神のようであり、石川さんは誇らしく、一段と大きく見える。

●「スターソング」――マウは、島と島を「星の唄」で繋いでしまう。1時間から2時間ほどの長い唄で、親から子へ口述で伝えてきた航海技術なのだ。「○○星の方向へ行くと、鯨に巻きついたウナギがいるよ。次の星へ向かうと、黄色いサメに会うよ」と口ずさみながら島から島を渡る。

●『挑む』――2001年の春、マウはハワイ→サタワル→日本を3ヶ月かけて帆走する大航海を計画している。もちろん、石川さんも同乗する。彼はマウの航海術から何かを学ぼうとしている。果てしなく大きなもののようで私にはとても想像つかない。いつの日か、マウから学んだ全てをもってナビゲートする日がやってくるに違いない。(清水良子)
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