98年5月の地平線報告会レポート



先月の報告会から・223(地平線通信223より転載)
秘境のアルバム
丸山純+令子
98.5.22 アジア会館

◆パキスタンのカラーシャ族という少数民族を追いかけて約20年という丸山さん。カラーシャ族は、かの“アレキサンダー大王の東方遠征軍の末裔”という一文を読んでいつか行ってみたいと思っていたことが動機と語る。

◆ブンブールカーン一家を初め、多くのカラーシャたちの生活の中に実際に入り、彼ら独自の伝統にのっとった生活習慣などの記録を続けている。初めて訪れた時は子どもだった人が、20年を経て、親の世代になっていく過程は面白かった。丸山さんは、この地に、この間、11回も訪れ、まるで親戚や家族のようだ。

◆私自身、少数民族の伝統的な暮らしぶりや民族衣装などに大変興味を持っており、以前、NHKでカラーシャの民族衣装にスポットを当てた番組を興味深く見たことがある。頭飾りから、衣装、帯、ビーズの首飾りに至るまで、全て手作りだ。カラーシャにとって大切な色は、赤、青、黄。ロンという植物の根から赤を、ザクロの皮から黄を、そして牛の尿にリンワットという染料を加えて青を染めて、手作りの伝統衣装をまとって独自の文化を守っているカラーシャの人たち。

◆そんな伝統社会の中にも、電気やテレビが村に入ったり、最近ではギリシャ人による援助で学校が作られたり(学校にはアレキサンダー大王の彫像がある!)、また、コンピューターを操る人が出てきたりと、文明の波が押し寄せ、近代化が進んでいく。それは、彼らの生活が便利になることではあるが、彼ら独自の伝統的な生活が薄れていくということでもある。

◆いわゆる途上国から日本に来ている人たちに、現代の日本を目の当たりにしてどう思うかとの私の問いかけに、多くの人々は一様に自分の国は素晴らしい、誇りに思っていると答えたことがある。カラーシャも、これからの自分たちの姿をどのように思い描いているのかと思いながら、また、地球が均一になっていく懸念を思いながら今回の報告を聞いていた。[室田夏子]


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