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宮本千晴・芳子 |
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★まず、サウジの国民性に対する遊牧的印象は、のっけから覆された。「『すぐにレポートを書け』『「提言しろ』とせかされてしんどかったが、適切な提言を出すとすぐに実行してくれる」「現地のカウンターパートナーが有能で、調査に必要な重機や船の手配もテキパキ進め、フィールドに出ている間も早朝から晩までブッ続けで頑張った」
★地平線に囲まれた国だから、「地平線」的な男が多いだろう、というヨミも外れた。「サウジの夫は家族に対する義務が重い。10日は何とか留守にできるが、3週間となると、よくよくのことがないとダメです」 これは、男女の世界が厳格に仕切られており、妻子の買い物や通勤通学にも夫の助けが要る、という社会的な事情もあってのことらしい。
★その反面、「サウジの人の暮らしや社会や世間の中での振る舞い方は、かつての日本の人のそれと色んな点で似ている」という。土産も『つまらないものですが』と渡す。「世話をする、されるの判断も、ほとんどの場面で日本人として判断して、(相手に)違和感を持たれることがなかった」と千晴さん。
★そして、冒頭の疑問も、終盤に入ってパッと解けた。「基本的に、国としてまだ若い。石油戦略を発揮できるようになったのは20何年前でしょ。若い人たちが、やっと国造りに一所懸命になり始めているところなんです」 なるほど、何も固まっていないのだから、国としての統一したイメージを求める方が間違いだ。「地平線がこだわってきた、『一個人の寸法で世界を見る』ことが大切だ」 千晴さんは、最後にそう強調した。
★我々は、歴史や伝統を下敷きにして、手っ取り早くその国を理解しようとする。また、今の日本の社会でも、続出する新たな現象に、「専門家」がすぐさま名前を与え、分類し、問題点を把握したつもりになっている。サウジでの経験から、千晴さん芳子さん夫妻は、そういった安直に答を急ぐ風潮をやんわりと諭したかったのではないか。そんなことを考えさせられる報告会だった。[臨時記録係ミスターX]
※『地平線通信』220(印刷版)では、宮本千晴さんのお名前が「千春」となっていました。申し訳ありません。
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