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かずみまき サドン・ボイラギ/アショク・ダス・バウル/シュクマール・マリック |
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◆かずみさんはバウルになるまでを簡潔に話した。あまりに短い自己紹介で、もっとかずみさんについて知りたいと思ったのは私だけではなかったはずだ。けれど、俗などうでもいい質問は、その場にはそぐわなかった。彼女は凛とそこに立ち、横には3人の行者が静かに座っていた。
◆バウルについて、グルへの質問が出た。話すより唄うほうが得意だからと、思いがけないライブとなる。オフィスのような素っ気ない空間で、グルは『ハッハッハッハッハ〜…』と、気分が良いときに出るという独特の笑いも披露してくれた。一弦琴エクターラ、鼓タブラ、小さなシンバルのジュリ。オレンジ色の衣を身につけたかずみさんの唄う表情には、ベンガルに住む女性の輝きがあり、のびやかで張りのある唄声は、自然でてらいなく、私たちの心に響いてきた。
◆かずみさんから曲の合間に、バウルの生き方や歌詞の説明があった。バウルは身体を痛めつける苦行を行わない。苦行によって得る満足感はエゴを増大させるから。また、グルは本を読むことをあまり勧めない。知識を得ることで、本当の自由から遠くなるから。バウルは一切の既成宗教を否定している。そして、人間の身体に全(すべて)があるという。身体に宇宙があり神がいるのだと。♪人間の身体は何でも手に入る魔法の木/手入れすれば宝が出る/ときをみて耕しさえすれば/この世に来た意味は満たされる♪
◆宝の種が身体に入った時、よく耕された柔らかな身体でなければ、なかなか芽は出ない。かずみさんはバウルに出会った時、既に柔らかな身体を持っていたに違いない。蒔かれた種を素直に育て、花を咲かせることができたのだから。
◆演奏を聴いたあと、清々しい気持ちになっていた。きっとそんな喜びを求めて、ベンガルの人々はバウルの唄と踊りを愛するのだろう。いつの日か村人達といっしょに、かずみさんの唄に酔いたい。[中畑朋子]
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