2001年8月の地平線報告会レポート


●地平線通信262より

先月の報告会から(報告会レポート・262)
キョーフの一瞬
森田靖郎+熊沢正子+安東浩正
2001.8.31(金) アジア会館

◆8月の報告会は、毎年参加者が少なめでさみしい。でも、今回、会場設営から参加して発見しました。8月の報告会は、報告者も内容もとってもゴージャス! これは見逃せないゾ。

◆今回のテーマは「恐怖」。スペシャルゲストは、優秀な編集者でちゃりんこ族の熊沢正子さん、さわやかサイクリスト安東浩正さん、裏社会に潜入するハードな作家・釣り師の森田靖郎さん。会場には画伯・長野亮之介氏が材料費500円・製作時間1時間をかけて演出した行燈が灯され、もりあがる恐怖に会場も思わずひんやり。

◆前半は、出席者から恐怖の体験談をかるーく披露していただいてから、森田さんがアンカー役を務め、スペシャルゲスト3人の恐怖体験に突入。

◆まずは、治安の悪いインドの山奥で、地元の屈強な男達にリンチされた安東さん。地元の男達を山賊だと信じ込んだ安東さんの対応が、村人たちに怪しい外国人テロリスト侵入という恐怖の種をまいてしまった。危険分子は排除しろ、と村人たちは安東さんを棒で殴りつけ、ジープに押し込む。疾走するジープから転げ落ちてあわやの脱出。昨今のアクション映画よりずっとリアルな恐怖体験です。

◆続いて紅一点の熊沢さん。フランス田園風景の中で花摘み(トイレ)最中に、お尻丸出しで、猟銃を突きつけられるという乙女のピンチなど、後をひく恐怖を語ってくれました。非日常のスリルを求め、見知らぬ土地を行くのが旅人。地元の人との接触はギャンブルに似ています。この場合、危機回避の防衛本能を磨くしかないのかなぁ。

◆大御所森田さんは、ハードなネタを追う取材者ならではのエピソードを披露。天安門事件を取材した森田さんは、数年後、ある集会のために、学生運動を指揮した中国人留学生と共に北京経由パリ行きの飛行機に搭乗した。中国公安のブラックリストに名を連ねる2人。入国が発覚したら、留学生は投獄され、森田さんも2度と中国に入れないという状況下で厳しいパスポートチェックに遭遇。森田さんの機転とパイロットの勇気によって、その場は突破できたものの、同行していた留学生は数年後、中国で消息を絶った。

とっさの機転で嘘をついたことがトラウマとなり、国境越えをするたび恐怖感がよみがえるという森田さん。十年以上も中国裏社会の取材を続ける森田さんが発見した危機回避の3か条は、スチールカメラよりもビデオ。小型カメラより大型カメラ。取材は大物ボスに直撃。裏社会を取材し、生き延びてきたノンフィクション作家の言葉は含蓄があります。

◆後半は、飛び入りで、ビッグな報告者が次々にとっておきの恐怖体験を語りました。江本さんは若き日の東京湾ナイトダイブで沈船内部での九死一生の体験談をしみじみと、賀曽利さんはさわやかな笑顔で、温泉取材での心霊写真撮影や峠越えで幽霊遭遇を話す。私はあんなに怪談を快活に話す人を見たことがない…。賀曽利さんの怪談が発端となり、三輪先生のおじさん幽霊との出会い・森田さんはTV取材で同行した女性キャスターの霊感体験と怖い話がぽんぽん飛び出る。しかも皆、どこか嬉しそう。これぞ危機回避の必殺技「笑う門には福来る」?

◆人生哲学を感じたのは、森田さんの釣人魂が打ち勝った恐怖体験談です。鮎釣り選手権全国大会を勝ち抜き、九州・球磨川での決勝戦に出場した森田さん。釣り人にとって、未知の川を進む一歩が死につながることもある。森田さんの恐怖心克服法、は日々の筋力トレーニングと合気道の修行、そして鮎釣りへの情熱。飽くなきチャレンジャー精神こそが恐怖を克服し、危険をかわす極意なのだと私は思いました。

◆充実しすぎて内容がまとまらない8月納涼報告会。こぼれたエピソードもたくさんあるけれど、会場に来た人だけの秘密なの。気になる方は来年の納涼報告会にご参加下さいませ。[山本千夏]


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