2000年8月の地平線報告会レポート


●地平線通信250より

報告会レポート・250
死ぬまで踊れ!!!  死んでも踊れ!! カルナバル
白根全
2000.8.25(金) アジア会館

◆地平線報告会初?!異例の2ヶ月連続報告となった白根全さんの今回の報告テーマも、先月に続きカーニバル。ラテンの真髄、娯楽の殿堂、そこには南米のすべてが凝縮されているといいます。ぼくら素人にはリオのカーニバルくらいしか頭に浮かびませんが、なにもブラジルだけがカーニバルではありません。もはやそれは南米各地でそれぞれの土地柄のリズムが織り込まれた風物詩となっています。カーニバル評論家(世界に二人しかいないらしい)の白根さん、今回はあまり知られていないそれでいて魅力一杯の様々な土地のカーニバルを紹介してもらいました。

◆黒人が90%を占める街でのカーニバルはアフリカルーツのリズムと融合して、まさにアフリカそのものの雰囲気。アフリカまで足を運んで先祖達のリズムを発掘してきて自分たちのチームに取り入れたという本格派から、女装オカマ集団の練り歩くチーム。はたまた非暴力主義をテーマにガンジーのそっくりさんに率いられるチームは、全身白のピュアな衣装を纏った数千人が練り歩き、その様子はまるで白き大河のように流れてゆきます。彼等はかつて新大陸での強制労働のためにむりやり奴隷船で運んでこられました。だけれど今のカーニバルはそんな悲壮を感じさせません。確かに普段の生活はまだ貧しさの中を漂っていますが、子供達が非行に走りやすいそんな環境の中でそれを防ぐ役割をすら、この一大イベントはもっているといいます。

◆白根さんの報告は南米各地に移ってゆきます。お次はアンデス。先程のアフリカ的世界から今度はモンゴロイド的インディオの世界です。そのハデハデ衣装もなんとなくアジアの伝統文化に共通する雰囲気が感じられます。傘のような頭飾りに刺繍の衣装の写真では、中国南西部の山岳少数民族の文化を専門とするぼくに「おっあれは雲南のミャオ族の民族衣装にそっくりではないか!」と思わせましたし、それに続く悪魔払いをテーマにした衣装の写真では、某代表世話人より「チベットみたいだ」との発言も聞かれます。さすがは新大陸。民族の多様さを見せ付けてくれます。

◆カーニバルの奥深さは文化的なものだけに留まりません。南米といえばぼくには「革命」といったイメージが強いですが、カストロやゲバラも報告の中に登場してきます。キューバ革命はカーニバルのどんちゃん騒ぎの混乱に乗じて始まったといいます。

◆その他各地の独特なカーニバル、ボディペイントは衣装を作るお金がない貧しさに始まったとか、重量百キロの衣装を身につけた超ドハデ爆発パフォーマンス、どことなくしらけた観光収入をもくろんだ商業的カーニバル、政府主催の…。いろいろありすぎてここで記すには紙面が足りません。カーニバル開催の裏に潜むマフィアの謎やら土建屋の癒着など、裏の世界まで知り尽くした報告に、南米のカーニバルといえば「胸も出してほとんど全裸に近いねえちゃんがボディペイントだけで踊り狂っている、これは見にゆかねば!」というまちがった動機しかもっていなかったぼくを、う〜んと唸らせて正しいカーニバル理解への道に導いてくれました。

◆カーニバルの目玉といえばその華麗な衣装と、欠かせないのがラテンのリズム。報告はスライドでのきらびやかな映像に留まらず、各地域ごとにそこを代表する音楽をラジカセで流してくれました。2回にわたる報告でも、そのラテンの真髄を語り尽くすことなどとても出来なかったようです。その真髄は一言では表せない、と白根さんは最後に語りました。

◆さて余談ですが、報告会の途中でスライドプロジェクタが壊れるというアクシデントが発生。20年以上ほとんど地平線始まって以来活躍してきた代物です。懸命の修理のおかげで何とか続きのスライドを見ることが出来ましたが、大切なスライドの一枚がダメージを受けてしまったようです。もう二度と同じ写真を撮ることは出来ません。お金で買うことのできない貴重な資料を惜しいことをしてしまいました。もはやこの機械は寿命をまっとうしました。世界中のあらゆるシーンでの報告者達の視線を、スライドを通してぼくらに映し続けてくれました。次回250回記念大集会in伊南村でのオークションの売上で新しいプロジェクタを購入するとのこと。来たるべく 21世紀、これからどんな映像をぼくらに見せてくれるのでしょうか。[安東浩正]


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