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●地平線通信244より
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東はるみ+クルト・メイヤー |
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◆「東はるみさんとクルトさんが、サイドカーでロシアを走って日本に来てるよ」と石川に住む友人から聞いたときはびっくり。「冬のロシアを、どうやって?」「冬は川が凍って、夏は湿地帯で走れないところも通れるようになるから、わざわざ冬を狙って、川の上を走ってきたんだって」。山形での写真展の帰り、江本さんにその話をしたら、ぜひ日本に居るうちに報告会に呼べないか、ということになり、鹿児島に里帰りしていた東さんをつかまえてお願いした次第です。
◆東はるみさんとクルト・メイヤーさんは現在スイスに住んでいます。1980年、お互いにイギリスに語学留学をしているときに知り合い、翌年にタンデムでの世界一周ツーリングに旅立ち、6年かけて42ヶ国、15万kmを走破しました。バイク雑誌などに旅のレポートが発表されたのが、ちょうど私が海外ツーリングを考えていた時期だったので、とっても印象に残っていました。
◆今回は、去年の7月にスイスを出発し、ヨーロッパをあちこち旅してからロシア、モンゴルと通って、ウラジオストックからフェリーで富山へ入り、東京から鹿児島まで往復して、戻ってきてばかり。まだまだ旅の途中です。ロシアでクルトさんの高い鼻が凍傷になりかかったり、モンゴルではバイクと人間の入国できる国境が別々で、いったん人間だけ入国してから、ロシアに戻って電車に乗せてようやくバイクも入れた、などの苦労はあったようですが、ホテルやガソリンの心配もなく、個人的に旅するには何の問題もないとのこと。治安も日本で言われているほど悪くはなく、あちこちで親切なロシア人家庭にお世話になったそうで、楽しく旅をしてきた様子がスライドから伺えました。どこでもウオッカを勧められ、一気飲みして二日酔いになった話も出て、ロシアを旅するには、酒に強くなくっちゃいけないんだ、と私は勝手に納得してしまいました。気になる旅の費用ですが、現在まで2人で 80万円くらいだそうです。日本の滞在費が一番お金がかかると言ってましたが、まったく同感です。
◆会場には、これからロシアを自転車で走りたい、去年行ってきたという人も来ていて、具体的な質問が多く飛び出しました。新しい顔ぶれも目に付き、いつものシーンとした報告会とはちょっと違った雰囲気がありました。
◆「ロシアは世界的には悪者のようにされているし、いいニュースは入ってこないけど、ロシアの人たちって、とっても暖っかいし、ロシアのいいところを少しでも伝えられればうれしい」とはるみさんが言っていたのが特に印象に残りました。2人は3月に再びロシアへ渡り、中央アジアの国々も訪ねてスイスへ戻る予定ですが、現在、日本でのビザ取得が難航しているとのことです。
◆身長 190cm以上もあるクルトさんと、150cmそこそこの小柄なはるみさんは、見た目にはかなりデコボコカップルですが、日本の一般的な40代夫婦と比べて、ずっと人生を楽しんでいるような感じです。ちなみにクルトさんは電気技師で、1年間休職して旅をしているとか。日本とヨーロッパのバカンスに対する意識の違いも大きいんでしょうけど、うらやましい限りですよね。
◆それにしても、ロシアやモンゴルをバイクで自由に走れて、ロシアと日本を結ぶフェリーができるなんて、数年前には予想もできないことでした。92年に私がサハリンを走ったときは、パトカーに誘導され自由な行動もできなかったけれど、時代はどんどん変わっていくんだなあ、と実感しています。その分私も年を取って、いつのまにか30代後半。ああ、タメイキ。
◆ところで先述の石川の友人は、バイクで西サハラルートを越えたときに車で旅していた2人に会ったそうです。その友人と私はエクアドルのキトでばったり会ったのですが、バイクで海外を旅するライダーは仲間意識が強く、帰国後もさまざまな形で交流をし、情報交換をしています。また、最近は海外ツーリングを一生に一度の大イベントでなく、興味のむくまま何度も出かけたり、長い世界一周の途中で一時帰国するなど、より気軽に考える人も増えてきました。女性一人で南米を走ってる人もいますし、定年後にバイクの免許を取り、海外の山を登りながらツーリングする、という男性もいて、一昔前の「海外ツーリング=冒険」という考えはなくなりつつあります。「海外ツーリング普及家」としての私の活動(ただ吹聴しているだけ)もだんだん功を成しているようで、うれしく感じています。
◆私も南米の旅から戻って早5年、次の長い旅を意識するようになった今日このごろ。やっぱり刺激的な海外ツーリングはやめられません。今度は日本からフェリーでロシアに渡り、中央アジア、アフリカというルートを検討中です。
◆最後に、東はるみさん著「地球に恋してタンデムラン」を寄付してくれた(株)造形社に多謝。当日の売り上げはお2人に贈呈しましたが、地平線会議でも数冊預かってますので、購入希望の方はご一報ください(税込 1500円)。[滝野沢優子]
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